構造コラム第27回「塔状比と基礎計画」

今回は、建物の高さと幅の比率と基礎計画ついての話です。

 

建物の高さ/建物の幅の比を塔状比と言います。

この塔状比が基礎の計画の目安になります。

 

 

 

この塔状比が2.5未満ですと、直接基礎の場合は常時荷重が支配的です。

必要地耐力は長期時の接地圧を考慮して検討します。

 

 

この塔状比が2.5以上となると、直接基礎の場合に地震時荷重の影響が出てきます。

必要地耐力は短期時の接地圧も考慮して検討します。

 

 

この塔状比が4未満ですと、杭基礎の場合は柱が押し込む力が支配的です。

杭は、長期軸力,短期軸力を考慮して必要支持力(=杭径)を検討します。

 

この塔状比が4以上となると、建物が倒れないように計画する必要が出てきます。

支点(柱下の杭位置)に引抜きが発生する可能性が高くなるためです。

杭は、地震時の引抜抵抗力を考慮して検討します。

 

また、この塔状比が大きくなればなるほど、杭に求められる引抜抵抗力も大きくなります。

そして、この引抜抵抗力は杭表面と地面との摩擦力が主たる要因です。

従って、場所打ち杭とした場合は杭径を大きくして杭表面積を大きくします。

 

 

 

 

 

建物形状によっては、部分的に塔状比2.5以上ないし4.0以上の場合があるかと思われます。

この時は前述の目安で考えると、部分的に地震力の影響が大きい直接基礎、部分的に引抜抵抗力の大きい杭基礎での設計が考えられます。

 

 

ここで、上図のように敷地境界までが狭い時の、直接基礎+地盤改良の場合を考えます。

まず、どのような改良工法であれ、一般的に一つの建物に対して部分的に改良体を変えることは行っておりません。

従って、『建物の殆どの部分で塔状比2.5未満だが、一部が2.5以上となる建物』の場合、その一部で必要となる短期接地圧が改良地盤の強度を決定する事があります。

(部分的に基礎面積を大きくして、短期接地圧と長期接地圧のバランスをとる方法もあります)

 

 

以上の様に、塔状比(建物の高さと幅の比)によって基礎計画が変わってきます。

構造種別、階数、高さ、面積などが似通っていても、建物形状が違えば(部分塔状など)、杭径や必要地耐力が変わってくるのはこのためです。

 

特に狭小地では、杭が打設できるか否かや、直接基礎を大きくできるかの問題点も含んでいます。

 

 

建物を計画する際には、塔状比が基礎計画へ影響することを考慮いただけると幸いです。

構造コラム第26回「ピロティとピロティ形式」

建築用語で「ピロティ」という言葉があります。日本建築学会編「建築学用語辞典」(岩波書店)によると、ピロティは「建築物の一階部分で、壁によって囲われず、柱だけの外部に開かれた空間」と記載されています。

 

前述の「柱だけの外部に開かれた空間」であるピロティは、意匠的な意味で書かれています。しなしながら、構造の観点での「ピロティ」は少々意味合いが異なります。

 

構造上のピロティは、ある階に地震の揺れに抵抗する壁(以下耐力壁)がある場合、その直下階には耐力壁が無く、柱だけで地震に抵抗する形式を指します。このような形式は、意匠上のピロティと区別するため、「ピロティ形式」や「ピロティ構造」と呼ばれます。また、ピロティ形式の柱を「ピロティ柱」や「下階壁抜け柱」といいます。

 

 

このピロティ形式の最も典型的な例をご紹介します。マンションなどでは、一般的に住戸の境界壁を耐力壁として設計します。しかし、1階はコンビニや駐車場にするため、耐力壁を抜いて広々とした空間となるよう計画します。このような建物はピロティ形式の建築物であり、1階を「ピロティ階」と呼びます。

 

 

ピロティ形式は構造上の弱点になってしまう場合が多く、過去の大きな地震被害でも、マンションの駐車場が潰れてしまった映像や写真をご覧になった方もいらっしゃると思います。もちろん構造設計ではピロティ階で崩壊しないように、ピロティ柱に鉄筋を多く入れ、地震に耐えられるように設計します。ですが、想定以上の地震が来た場合はどうしてもピロティ階に被害が集中してしまいます。

 

一方で、ピロティ(意匠上のピロティを含む)のおかげで被害が軽減したという事例が報告されています※1。東日本大震災では津波による被害が顕著でしたが、ピロティで外壁が無かったために、津波のエネルギーを受けなかったと分析されています。

 

身近な建物がピロティ形式かどうか確認しておくと、いざという時に有効な避難に役立ちそうですね。

 

参考文献

※1 田中 礼治、澁谷 陽:津波とピロティ構造 (特集 東北地方太平洋沖地震5周年「震災復興と地震・津波対策技術」(その1)) 日本地震工学会誌 = Bulletin of JAEE / 日本地震工学会 編 (27) 2016-02p.36-41

構造コラム第25回「鉄骨造の場合の地中部について」

今回は、鉄骨造の建物を計画する時に、気をつけていただきたい点です。

特に狭小敷地の場合にご注意ください。

延べ面積を大きくとるために、外壁ラインを敷地境界に目一杯寄せる場合を想定します。

 

この時、地上部の柱・梁は小さいので、綺麗に納まっているように見えます。

また、エレベーターがあったとしても柱と大梁をかわして有効寸法が確保できます。

 

確かに”地上部は”綺麗に納まっています。

 

建物には地上部だけでなく、地中部が存在します。

鉄骨造の柱脚で代表的な、露出柱脚で考えてみます。

 

仮に地中部に1000*1000のRC柱型が必要な場合は、どうでしょうか。

へりあき距離が短く掘削ができない可能性がある事がわかります。

また、エレベーターの場合はどうでしょうか。ピットの有効寸法が確保できますでしょうか。

 

 

 

 

このように、鉄骨造の場合は地中部に地上部の柱より大きいRC柱型が入ります。

外周部やピット部の計画の際には、地中部にボリュームの大きいコンクリートの塊が

入る事を念頭に計画をお願いいたします。

構造コラム第24回「全体崩壊と層崩壊」

現行の構造計算は、稀に発生する中程度の地震(震度4~5弱程度)に対して「柱や梁が損傷しないことを目標」とする一次設計、極めて稀に発生する最大級の地震(震度6強程度)に対して「柱や梁に損傷が生じても、倒壊・崩壊しないことを目標」とする二次設計に大別されます。今回はこの二次設計に着目してお話します。

 

前述のとおり、二次設計では柱や梁が部分的に壊れることを許容しますが、倒壊・崩壊しないようにと定められています。柱や梁が壊れても、建物全体が倒壊・崩壊しないとは一体どのような状態なのでしょう。

 

建物全体の壊れ方には、大きく分けると2通りあります。梁が先行して壊れる「全体崩壊」と、柱が先行して壊れる「層崩壊」です。

 

 

全体崩壊は梁が壊れて変形がどんどん進み、地震のエネルギーを「ひずみエネルギー」に変換して地震に耐えようとする設計です。一方層崩壊は、梁よりも柱が先に壊れてしまいます。この状態では壊れた柱は上からの荷重に耐えきれずに潰れてしまいます。図だと2階にいる人はまず助からないでしょう。

 

設計ではなるべく層崩壊を避け、全体崩壊となるようにしますが、層崩壊となってしまう場合でも、柱が壊れた時点で想定される地震に耐えていれば問題ありません。

 

しかしながら実際に地震が起きた場合、設計で想定した壊れ方にならないことがよくあります。特にこの層崩壊になりやすい建物があります。1階に駐車場のあるマンションです。マンションの住戸部分は地震に抵抗する壁がたくさんありますが、1階の駐車場は壁がない場合がほとんどです。このような形状では1階の柱が先行して壊れてしまうことがあります。

 

もちろん設計では全体崩壊とする、あるいは層崩壊が起こる前に地震に耐える設計としていますが、実際はそううまくはいきません。

 

地震被害などで、1階の駐車場が潰れて車がぺしゃんこになっている写真を見たことがある人もおられると思います。あれはまさに1階で層崩壊を起こしてしまったのです。

 

このように、「この建物はどこが弱点でどう壊れるか」を考えながら建物を眺めてみると、建物への見方が少し変わるかもしれませんね。

構造コラム第23回「太陽光発電設備の構造設計-経済性と安全性の両立-」

太陽光発電設備は、2012年7月の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)の導入に伴い
建設が急増しました。
しかし近年、構造体力不足を要因とした暴風や大雪による被害が増加してきています。

被害の事例として下記があげられます。
・土砂災害・水害
・積雪による基礎の沈下
・暴風による架台の損傷

これは、2017年にJIS C 8955が「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法」に改訂され
た際、構造設計に関する内容が削除されたことが大きな要因として考えられます。

そのため経産省は、構造安全性を考慮した、太陽光発電設備の架台や基礎に関する設計ガイドラ
インを2018年を目処にまとめることとしています。




(出典:経済産業省 産業保安グループ 電力安全課 【太陽光電池発電設備に関する電気設備の
技術基準の解釈改正について】 平成30年3月12日)

しかし一方で、太陽光発電設備は事業の側面を持つ以上、経済性(コストメリット)も重要とな
ります。

構造設計者として経済性と安全性を両立した設計が求められています。
また今後は、事業の側面を考慮し、誰にでも利用できる設計システムの構築も考えていく必要が
あるかもしれません。

構造コラム第22回「基礎と建物と敷地」

今回は、基礎形式と建物規模と敷地条件のお話です。

①基礎形式の種類
基礎の種類は大きく二種類の形式に分かれます。
一つが直接基礎(独立基礎,布基礎,ベタ基礎)で、もう一つが杭基礎です。
そして、一つの建物において直接基礎と杭基礎の併用は、建築基準法施行令38条により原則禁止されています。

②建物規模と基礎形式の想定
建物規模・構造種別・設計ルートにより、どちらの基礎形式となるかが想定できます。
軽い木造は直接基礎,比較的軽い低層のS造やRC造も直接基礎、ペンシルビルタイプのS造や重いRC造は杭基礎などです。

③敷地条件と基礎形式の想定

敷地条件により採用できる基礎形式が想定されます。

直接基礎が想定される建物でも、地盤を調査した結果によっては、杭基礎としなければならない場合もあります。
例えば、液状化する地域で支持層が深い場合です。

液状化するだけでしたら、一般的な地盤改良で済むかもしれません。
支持層が10m程度にある場合は、液状化層を貫通して支持層まで地盤改良を行うことにより、直接基礎を採用できます。
しかし、支持層が15m程度となると杭基礎の採用を考える必要があります。
それは、一般的な地盤改良工法(柱状改良による工法)の適用範囲が10m前後までのためです。

逆に、建物規模から杭基礎が必要な場合でも、直接基礎としなければならない場合もあります。
例えば、敷地形状が鰻の寝床のような細長い場合です。

一般的に、敷地幅が狭く杭打機が旋回できないので、必要な箇所に杭を打つことができなくなるためです。
この時は、建物計画自体の変更が必要になったり、施工可能な杭基礎を探していただくなどが発生します。

お見積りをご依頼の際に地盤調査結果もご用意いただくと、基礎計画のご案内もできます。
近隣ボーリングでもよいので、ご用意いただけましたら幸いです。

構造コラム第21回「振動解析への誘い」

構造設計は、数多くの「仮定」のもとに成り立っています。とりわけ地震の力と建物の挙動は、仮定の上に仮定が重なるようにして計算しています。低中層の建物は、過去の地震被害や多くの実験などの実績があり、現行の計算方法が「あながち間違いではない」ということは経験的に分かっているのです。

一方、超高層建築物(高さ60m超)は日本で建設されてから日が浅く、地震に対して建物がどう動くか、どのような被害が出るかということは、実際のところ「よくわかっていない」というのが実状です。そこで、より現実に近い状態で精密なシミュレーションを行うため、超高層建築物には振動解析(時刻歴応答解析)という計算が義務付けられています。(ちなみに振動解析は、ラケットや家電、自動車や航空機にも行われています。)

しかしながら、超高層の設計に携わったことのある構造設計者はほんのひと握りです。つまり大多数の構造設計者にとって、振動解析は「自分には手の届かないもの」「仕事には役立たないもの」なのです。実際私も学生のころは、構造設計者は振動解析の技術を持ち、ベテランともなれば皆一度は超高層の設計に携わったことがあるのだろうと思っていました。ですが現実はそうではなく、自ら望み、その世界へ飛び込まなければ決して出会うことのないものだと痛感しました。

ではこの先も、超高層に携わらない構造設計者は振動解析に対して無関心でいいのでしょうか。決してそんなことはありません。構造設計者は構造設計の専門家であり、知らなくていい事柄など一つとして無いのです。今の低中層の計算方法にも振動解析の考えが数多く取り入れられており、将来低中層の建物にも振動解析が義務化されるかもしれません。ですから、構造設計者はもとより、意匠・設備設計者や一般の方々にも、何をやっているかぐらいは知っておいていただけると幸いです。

ここでほんの少しだけ、振動解析の世界をご紹介しましょう。

「F=ma」
という式をご存知でしょうか。これは、「力(慣性力)は質量と加速度の積」というニュートンの第2法則を示した式です。なんだか中学校か高校の物理で習った記憶があります。

低中層建物の構造設計はこの法則に基づいて、地震によって建物にどれだけの加速度aがはたらくかを想定し、どれだけの力Fがかかるかを計算します。電車や車に乗っているとき、急激な加速や減速があると、誰かに押されたような感覚になります。地震が起こった時に、建物にもこれと同じ現象が起こっているのです。

私達にとって一番身近な加速度といえば、重力加速度ですね。これは地球上であれば変わることはありません。地震によって建物にどれだけの力がかかるかは、この重力加速度を基準に考えます。建物にかかる加速度をa、重力加速度をgとすると、建物の自重に対してa/gという割合で力がかかると想定し、このa/gについて震度4程度では0.2や0.3、震度6強程度では1.0を基本としています。そしてこのa/gを震度と呼びます。

この計算方法は、地震で左右どちらか一方から押されたときに、「押された直後のある瞬間」を抜き取って考えているのです。これは低中層の構造計算で最も一般的に用いられ、「静的解析」といいます。ある瞬間なので揺れることはなく、「静か」なのです。

次にこの「F=ma」を少し変化させましょう。

「F-ma=0」
ただ移項させただけのようにみえます。もちろん数学的にはそうなのですが、工学的には重要な意味を持ちます。

地震で押された後のことを考えてみましょう。柱や梁は押されて変形した後、元に戻ろうとします。この力を「復元力」といいます。地震で揺れる度に、建物には慣性力と復元力がかかり、上の式はこの二つの力が動きながら常に釣り合っていることを意味しています。これは振動解析の考え方の基礎となるものであり、これらの計算を総称して「動的解析」といいます。動的解析には時間の概念が加わるので、静的解析より複雑になってしまいます。

この移項した式を「d’Alembert(ダランベール)の原理」といいます。

実際の振動解析では、これらに空気抵抗や摩擦による揺れの減衰を考慮します。復元力も一定とは限りません。そして時々刻々と変化する地面からの加速度に対して、ある時間分ごとに計算を行います。

建物を解析するとき、床の位置にその階の質量を集めた点をつくり、計算が簡単になるように建物を簡略化するようにします。この質量を集めた点を「質点(しってん)」といい、このようなモデルを通称「串団子モデル」と呼びます。見ての通りおだんごのようですね。

解析ではこの質点ひとつひとつについて、どのような力がかかり、どのように動くかを解析します。
さらに建物はこの質点の数だけ揺れのパターンがあり、それらをひとつずつ解析しなければなりません。
20階建てなら20パターン、30階建てなら30パターンあり、それぞれのパターンに対して、全ての質点を解析します。

これをある時間分ごとに計算していくわけですが、一般的に建物の振動解析では、0.01秒や0.001秒ごとに行うことが一般的です。例えば3分間(180秒)建物の揺れを0.001秒ごとに確認したければ、180/0.001=180000回この計算を繰り返すことになります。

非常に大雑把な説明でしたが、振動解析のイメージを掴んでいただけたでしょうか。これだけ膨大な計算を人間が手計算でやろうとすると、一生かかってもできないでしょう。振動解析はコンピュータが発展したからこそ確立した計算方法であり、これからの構造設計には欠かせない技術であることは明白です。そして、構造設計者はさらなる技術発展に寄与し、少しでも被害を軽減させて社会に貢献するという責務を負っているのです。

構造コラム第20回「建物の『バランス』-剛性率と偏心率-」

みなさんは、建物の『バランス』を考えたことはありますでしょうか。

例えば、木造の建物で告示上の耐力壁の量が足りていても、実際に構造計算をすると建物のバランスが悪いため、想定よりも大きな力が働き、部材が大きくなってしまう場合があります。

では、建物の『バランス』の良し悪しは建物のどこに宿っているのでしょうか。
今回は、建物の『バランス』を考える際の構造上の指標についてご紹介します。

構造上の建物のバランスを計る指標として、『剛性率』、『偏心率』という2つの考え方があります。
この2つの指標を満たすことで、構造上は『建物のバランスがよい』と考えます。

まず、『剛性率』とは『立面的なバランス』を計る指標になります。

図①

図①は、柱・梁が同じ部材である建物として考えます。
上図の通り、図左側の建物は各階の階高がほぼ等しく、
【地震に対して各層が均等に変形する=各層の剛性率がほぼ同じ値になる】
ことが予想されます。
一方、図右側のような吹き抜けなどが存在し、一部の階高が突出して高い建物の場合は様子が異なります。
図右側の建物では、
【階高の高い層の変形が大きくなり、上下階とのバランスを見ると、その層のみ柔らかくなる=階高の高い層のみ剛性率が小さくなる】
ことが予想されます。

図をご覧の通り、階高の高い層に力が集中してしまい、その層のみ被害が大きくなる恐れがあるため、構造上注意を要します。
この場合は、階高の高い層のみを強度の高い柱断面に変更するといった構造的な対策をする必要があります。

このように高さ方向の『立面的なバランス』を計る指標が『剛性率』になります。

次に、『偏心率』とは『平面的なバランス』を計る指標になります。

図②

図②は、平面的にバランスがよい建物になります。
建物の平面的なバランスを考える際には、
【各方向の地震力ごとに耐震要素を分解する】
ことが重要になります。
各方向の地震力に対して、耐震要素がどのように配置されているかを見ることで平面的なバランスがわかります。

ご覧の通り、図②の建物は、どちらの方向の地震力に対しても上下、左右にバランスよく配置されていることがわかります。
このような建物の場合には、地震に対しても大きな偏りなく、抵抗することができると考えられます。

では、平面的なバランスが悪い場合として、南側に大開口を設けた場合を考えてみましょう。

図③

上図の通り、X方向の地震に対して平面的なバランスが取れていないことがわかります。
建物上下で耐震要素のバランスが悪く、建物下側の耐力壁に大きな力が働くことが予想されます。
この場合は、偏心率が大きくなり、ある一定の数値を超えると、構造計算上割増係数をかけて耐力に余裕を見る必要があります。

このように耐震要素の配置による『平面的なバランス』を計る指標が、『偏心率』になります。

告示に則り建物を設計していると、耐力壁や、柱の数など部材の『量』にのみどうしても目がいってしまいます。
もちろん部材の『量』を満たすことは重要ではありますが、その上で部材の『バランス』まで気を配ることができれば、必要以上の部材がなくなり、すっきりとしたデザインが実現できます。

構造コラム第19回「RC造ラーメンの耐震壁について」

RC造ラーメン架構の耐震要素として、耐震壁があります。

どのようなRC造の壁も耐震壁となるのかと言うと違います。

耐震壁とできる壁の条件は、下記になります。

 

 

しかし、実際には採光などの問題で、RC造の壁に開口を設ける場合があります。

開口(1つまたは2つ)を開けた場合に耐震壁とできるかの条件は、下記になります。

 

 

開口の面積や位置によって、耐震壁にできる場合とできない場合があることがわかります。

 

また、耐震壁の構造設計を行う際に、√(A0/A),L0/L,H0/Hの3つの割合に基づき、耐震壁の剛性や耐力を低減させます。

 

低減という言葉からわかるように、耐震壁からすると開口=欠損となってしまいます。

 

同じ階の同じような耐震壁でも厚さや配筋が違ったりするのは、この低減による場合もあるのです。

 

せっかく壁を計画しているのですから、耐震壁として有効に活用したいものです。

構造コラム第18回「コンクリートのせん断ひび割れ」

現在の日本では、建築物の構造体に使われる材料は木・鋼・コンクリートが主流になっています。その中でもコンクリートは、鉄筋コンクリート造はもとより木造や鉄骨造の基礎にも使用され、最も多く使用される構造材料と言えるでしょう。

 

今回はそのようなコンクリートの性質についてご紹介します。

 

コンクリートはひび割れしやすく、乾燥収縮やクリープ荷重(長期的にかかる荷重から瞬間的にかかる荷重を引いたもの)で簡単にひび割れてしまいます。補修管理を怠ると、鉄筋が錆びたりコンクリート片が落下して重大な事故につながりかねません。

 

力学的には圧縮に強く、引張に弱いという特徴があります。引張力を受けると途端に割れてしまうため、構造計算ではコンクリートが引張に耐えることには期待しません。

さらにもうひとつ、力のかかり方に「せん断力」という力があります。この力は物を二つに分断しようとする力で、はさみで紙を切ることができるのは、紙にせん断力がはたらくからです。このせん断力とコンクリートの関係について詳説しましょう。

 

このようなモデルを考えてみましょう。

コンクリートには両端にせん断力がかかります。

せん断力がかかっている部分を細かく観察すると、斜め方向に引張力が作用しています。この力を「斜張力」といいます。先ほど述べたように、コンクリートは引張に弱いので、この斜張力と直交にひび割れが生じてしまいます。このひび割れを「せん断ひび割れ」と呼びます。

 

実際の建物では、このような形状をよく見かけます。

構造体の長さが短くなると、せん断破壊が起こりやすいという性質があり、この場合壁がない柱の部分にせん断力が集中してしまいます。すると

このように柱にせん断ひび割れが生じ、さらに力が加わるとせん断破壊が起こります。せん断破壊はとても脆い(ガラスのような壊れ方をする)性質があり、大変危険です。もちろん構造設計ではこのような破壊が生じないように設計しますが、地震の際、このようなひび割れを見つけた時は要注意ですね。