構造コラム第34回「構造計算の地域格差」

 構造計算のなかで、建物にかかる地震の力を算定する際に「地域係数」という数字を使います。これは、日本全国で一般的に地震が起こりやすいとされる地域を1.0として、過去の地震被害などをふまえて0.9、0.8、0.7まで「地震の力を低減しても良い」とした数字で、国土交通省の告示で定められています。

 1950年(昭和25年)に建築基準法が制定されたときは、この地域係数はなく、全国同じ地震の力を想定して構造計算が行われていました。その後1952年(昭和27年)に当時の建設省が告示を制定して地域係数が定められました。この制定の基になったのが、地震学者の河角広博士のハザードマップ(河角マップ)でした。このマップは、日本の有史以来過去にどの程度の地震がどれくらいの頻度で発生し、今後も同程度の地震が発生するであろうと想定して、日本全国に細かく加速度をプロットしたものです。この河角マップから都道府県ごとに1.0から0.8までの数値が割り当てられました。

 2016年4月に発生した熊本地震に関して、被害のあった地域では地域係数を0.9または0.8と定めています。つまり熊本は、全国的にみて過去の地震の被害が少なく、これからも大きな地震被害は起こりにくいであろうと想定されていました。これは、地域係数が人間の有史から想定されたものであり、人間が経験していないもっと昔のことなど考慮されていないからです。このことからも、人間が経験した範囲で定められたこの数字について、本当に必要なものなのか?と疑問が残ってしまいます。しかしながら、被害を受けた多くの建物が2階建ての木造で、これは地域係数を使った構造計算はしておらず、簡易な計算方法で建てられたものでした。ですから「地域係数を低減したから被害が大きくなったのだ。」とは必ずしも言い切れません。

 沖縄県では地域係数が0.7と定められています。実は、沖縄県は本土の1.0と同じほどの地震を経験しています。もっと言うと、鹿児島県は大部分が0.8であり、奄美大島とその周辺諸島は1.0と定められています。0.8から南下して1.0となり、海を渡って0.7とはかなり不思議な値になっていますね。これは、沖縄県の地域係数が地震被害から決められたものではなく、歴史的な背景があるからです。地域係数が定められた1952年、沖縄はまだアメリカ領でした。そのため日本の法律が適用されず、1950年より前の基準法で設計されていました。そして1972年、沖縄がアメリカから返還され沖縄の地域係数を制定するとき、1.0にするとそれまで想定していた2倍の地震で計算しなければならなくなりました。それはさすがにやりすぎだろうということで0.7という数字に落ち着いたようです。

 今この地域係数を、「もっと精密なものに改訂すべき」または「完全に撤廃すべき」という意見があり、議論を呼んでいます。これからも「想定外の地震」が起こることは大いに予想できますが、撤廃すれば低減によって設計された建物は「既存不適格」になってしまいます。この数字の扱いについては、設計者はこれからも付き合っていかねばならないのです。

※参考文献
大崎順彦:地震と建築、(岩波新書、1983年8月)

構造コラム第33回「木材の規格と等級 その2-知らないと話にならない製材の規格と等級-」

今日、私たちは設計において特に意識することなく、規格化された製材品を使用しています。

しかし、その規格がどのような区分となっているのかについては、あまり知られていません。
今回は前回に引き続き、木材の規格と等級についてご紹介します。

現在、市場に流通している木材は、『農林物資の規格化および品質表示に関する法律(JAS法)』に基づき、JASで定める標準寸法に従って製材されています。

構造上での性能を評価する場合は、『集成材』であるか、『製材』であるかの大きく二つに分類することができます。

今回は、『製材』についてご紹介します。

ここでの製材とは、【森から原木を樹種や必要とする部材に合わせて木取りをして鋸引きしたもの】を指します。

こちらは、規格として下記の【3つの特徴】に従って分類されています。

①目視で判断したものであるか、機械で判断したものであるか
 まず、人が目視で判断したものであるか、機械が判断したものであるかで製材は区分されています。

 ●目視等級区分製材:人の目視による区分。
 ●機会等級区分製材:機械によりヤング係数を測定し、製材の強度をE50~E150の6つの等級 に区分。

②使用部位 <目視等級区分製材>
 目視等級製材は、さらに使用部位ごとに2種類に区分されています。

 ●甲種構造材:梁や桁などの主として【曲げ性能】を必要とする部分に利用。
 ●乙種構造材:柱や間柱など主として【圧縮性能】を必要とする部分に利用。

③木口の断面寸法 <甲種構造材>
 甲種構造材は、さらに木口の断面寸法により2種類に区分されています。

 ●構造用Ⅰ:主に板状と棒状の製材が対象。
        <大きさの条件>:○木口の短辺が36㎜未満
                 ○木口の短辺が36㎜以上+木口の長辺が90㎜未満
 ●構造用Ⅱ:主に厚板状と角状の製材が対象。
        <大きさの条件>:○木口の短辺が36㎜以上+木口の長辺が90㎜以上

いかがでしたでしょうか。
ひとくちに製材と言っても、様々な分類があります。
製材の場合、この分類に加えて【無等級材】が存在します。もっとも安価ですが、強度のばらつきが大きいため注意が必要です。
構造設計者としては、このような材料に対する理解に基づき、建物に応じて材料を選択し、安全性・経済性に見合った設計を行っていく必要があります。

参考文献:新・木のデザイン図鑑 2009年6月12日発行

構造コラム第32回「木材の規格と等級 その1-知らないと話にならない集成材の規格と等級-」

今日、私たちは設計において特に意識することなく、規格化された製材品を使用しています。

しかし、その規格がどのような区分となっているのかについては、あまり知られていません。
今回と次回は、木材の規格と等級についてご紹介します。

現在、市場に流通している木材は、『農林物資の規格化および品質表示に関する法律(JAS法)』に基づき、JASで定める標準寸法に従って製材されています。

構造上での性能を評価する場合は、『集成材』であるか、『製材』であるかの大きく二つに分類することができます。

今回は、『集成材』についてご紹介します。

集成材は、人工乾燥でよく乾燥させて欠点を取り除いたラミナ板を木目に沿って、長さ・幅・厚さの方向に接着剤で集成接着した建築材料を指します。
近年では、機械プレカットの普及により需要が一挙に増加しています。

規格としては、下記の【4つの特徴】に従って分類されています。

①断面の大きさ
 断面の大きさにより、大断面・中断面・小断面の3つに区分されます。

 ●大断面:短辺が15㎝以上、断面積が300㎝2以上のもの
 ●中断面:短辺が7.5cm以上、長辺が15㎝以上のものであって大断面集成材以外のもの
 ●小断面:短辺が7.5cm以上、長辺が15㎝未満のもの

②ラミナ板の構成
 集成材とは、ラミナ板を重ねたものですが、その板をどのように重ねるかで品質が異なってきます。

 ● 【同一等級構成集成材】 : 主に柱として利用。 同じ品質のラミナを重ねたもの。
 ●【異等級構成集成材】: 主に梁として利用。 外側の層ほど強度の強いラミナ板を重ねたもの。
また、構成の仕方により【対称構成・非対称構成・特殊構成】に区分。

③E○○-F○○
 強度等級として、【E(ヤング係数)】と【F(曲げ強さ)】で区分して表記します。
 一般にヤング係数Eと曲げ強さFは相関関係にあります。

 ●例:E105-F300 →一般にEが大きいほど変形しにくく、Fが大きいほど強度が大きい。

④使用環境
 集成材の使用する環境に応じて接着剤の要求性能の程度を示す【使用環境A、 B、 C】の区分があります

 ●使用環境A:屋外での利用。高度な耐水性・耐候性・耐熱性が要求される環境
 ●使用環境B:屋内での利用。構造物の火災時において高度な接着性能が要求される環境
 ●使用環境C:屋内での利用。

いかがでしたでしょうか。
一口に集成材といっても、断面の大きさ・ラミナ板の構成・強度・使用環境により様々な規格があります。
もちろん要求性能が高ければ高いほど、高価な材料となります。
私たち構造設計者は、材料に対する深い理解に基づき、建物に必要な性能を見極め、材料を選択していく必要があります。

参考URL:日本集成材工業協同組合<http://www.syuseizai.com/home>

構造コラム第31回「模型で学ぶ構造力学」

 工業高校や専門学校、大学などで建築構造を学ぶ時、最初に教わるのが構造力学です。柱や梁にどのような力がかかるかをひとつひとつ紐解いていきます。しかしながら、紙の上で「力を解く」という作業では、実際に力がはたらいたときに部材がどのように変形してどこで耐えているかは、イメージしにくいかもしれません。
そこで今回は、鉄筋コンクリート造の模型を使って力のかかり方を視覚的に解説しましょう。

 構造力学では、基本的に3つの力を使って釣り合いを考えます。3つの力とは軸力(引張、圧縮)・せん断力・曲げモーメントです。ではこの3つの力を、模型を使って見ていきましょう。

 まずは軸力です。部材を横に引っ張ったり押したりしたときに生じる力で、これは比較的イメージしやすいですね。模型を引っ張ると鉄筋が効いていることがよくわかります。

 次に、せん断力です。これは物を切断しようとする力で、身近なもので言うと、はさみで物を切るときにはたらく力です。例えば短い柱があったとき、左から力を受けるとこのように変形します。

 これはせん断力によって柱を真っ二つに切ろうとする力がはたらいていますね。ちなみにこのようにせん断力による破壊は、とても脆く危険な壊れ方をするので、構造設計ではなるべくせん断力で壊れないような設計をします。
 
 最後に、曲げモーメントです。この曲げモーメントは文字通り物を曲げようとする力です。純粋に曲げモーメントだけがかかると、断面には引張と圧縮がかかります。これを模型で見ると良くわかりますね。

片持ち梁だと根元に大きな曲げモーメントがかかることが分かります。

 このように、構造力学は紙の上だけでやっていると複雑で分かりにくいですが、視覚的に考えれば、案外シンプルなことだとわかります。大学の偉い先生や企業の研究者もたくさん実験をしています。わからなければ実際に造ってやってみる。これが正解へたどり着く確かな道しるべとなるのです。

構造コラム第30回「建物のモデル化」

 物体の動きや強さなどを解析するとき、その形をそのまま作って解析すると、とてつもない時間がかかり、膨大な計算量となってしまいます。建築の構造計算をするときも例外ではありません。そこで、複雑な建物の形状を計算しやすいようにシンプルな形に置き換えます。この操作を「モデル化」といいます。
モデル化にもいろいろなものがあります。まず最初に行うモデル化は、柱や梁などを一本の線として置き換えます。これを「線材置換」といいます。

 次は建物を支えるところについてです。建築では支点と呼びます。支点には大きく分けて4種類に分けます。横に移動できるローラー、移動はできないが角度が自由に動くピン、移動はできず角度は力を加えた分だけ曲がる回転バネ、移動も回転も拘束された固定の4種類です。

 他にもいろいろな箇所でモデル化を行っています。また、計算方法が違うと建物全体で全く異なったモデル化をすることもあります。

 このように、一つの建物を解析するときに、いたるところでモデル化をしています。モデル化は計算が簡単になる反面、実際の建物とは大きく異なった性質になってしまうこともたくさんあります。そこは構造設計者の判断で、どのようなモデルを選択するか。設計者の腕の見せ所です。モデル化は、構造設計の中でも最も難しくもおもしろい分野だと思います。

構造コラム第29回「建物にはたらくちから」

 地球上にある建物にはさまざまな力がはたらきます。重力によるもの、気候によるもの、土や水など、その要因は多岐にわたります。構造計算では、建物にかかるであろうこれらの力に対して安全であることを確認しなければなりません。

 建物にかかる力の代表的なものをご紹介しましょう。力には、常に力がはたらいている「常時荷重」と突発的にはたらく「臨時荷重」とに大別できます。

 代表的な常時荷重には、固定荷重、積載荷重、土圧、水圧などがあります。
・固定荷重
 建物本体の自重のことで、柱や梁、壁や床、設備機器など移動することのない物の重さを合わせた力です。
・積載荷重
 建物内部において、移動することが想定される力のことです。
例えば、家具や人は積載荷重に含まれます。特に倉庫などは、どのような物を置くかを把握し、厳密に算定しなければなりません。
他にも部屋の用途によって、この積載荷重は細かく定められています。
・土圧
 地下にある壁をイメージしてください。片側は土に接しており、もう片方は土が無い場合、壁は土から横に押されるような力を受けます。これが土圧です。
土圧は土の種類(砂や粘土)などによってその性質は大きく変わります。
・水圧
 水圧は、深海に物を沈めると四方八方から力を受けてかなり小さくなってしまう現象でよく説明されますが、建築の場合問題になるのは地下水です。
地下水の位置が建物より上になると、浮力がはたらきます。

 一方、臨時荷重には、地震力、風圧力などがあります。
・地震力
 地震によって建物が受ける力のことです。
日本は世界でも有数の地震大国で、この地震力は建築基準法でもかなり厳格に算定方法が決められています。過去の地震被害から何回も法改正が行われてきましたが、大きな地震が起こるたびに被害が出てしまいます。
・風圧力
 風の力をあなどってはいけません。木造や鉄骨造などの軽い建物は、地震よりも風の力の方が強いこともあるのです。風圧力も地震力同様、過去の台風被害などから地域ごとに細かく定められています。

 その他
・積雪荷重
常時荷重と臨時荷重のどちらともいえないのが、雪の重さによる積雪荷重です。
積雪荷重は、地域によって常時荷重としてみるのか臨時荷重としてみるのかが変わります。北陸地方や東北地方など、雪がたくさん降る地域は、常時荷重として考慮しなければなりません。

 ちなみに構造計算では、この常時荷重を「長期荷重」、常時荷重と臨時荷重を合わせたものを「短期荷重」と呼び、それぞれに対して安全であることを証明しなければならないのです。

構造コラム第28回「構造設計ってなにやるの?」

 構造設計は、地震や台風などの自然災害から、人命や財産を守るとても大事な工程です。しかし、構造設計をやったことがない人にとっては、何をやっているのかわからない未知の領域です。そこで今回は、構造設計とはどういうことをしているのか、簡単に解説します。

 天井から針金を使っておもりを吊るすとしましょう。左の図のように、1本の針金を使っておもりを吊るすとき、おもりの重さに耐えられるような、切れない太さの針金を決めます。

 次に右の図では、斜めに針金が取り付いています。それぞれの針金にかかる力はどれくらいか、そして重さに耐えるにはどのくらいの太さの針金が必要かを考えます。さらに、天井と針金の接合部分はおもりの重さに耐えることができるか。おもりと針金の接合部分は針金が切れる前に壊れたりしないか。といったことも検討します。

 実際の構造設計では、まず針金をどこにどう配置するか。すなわちどこに柱を配置し、梁をどう架ければ、安全でかつコストを抑えることができるかを考えます。この工程を「構造計画」といいます。

 次に、その針金にかかる力はいくらで、どれくらいの太さならば耐えることができるか。すなわち柱や梁にどのような力がかかり、どれくらいのサイズならば安全であるかを探ります。この工程を「構造計算」といいます。

 そして、柱や梁をどう配置するか、どれくらいのサイズかを「構造図」として作図します。

 この一連の作業が「構造設計」なのです。構造設計をやるまでは「なんだか難しそうだな」と思っていましたが、いざやってみると「…想像していたよりはるかに難しい」というのが正直な感想です。それだけ奥が深い分野と言えますね。

Q.クラウドサインでの操作はどのように行うのですか?

A. お客様の操作手順がわかる資料をご用意しております。そちらの資料をご参照の上、承認の操作及び原本保存の操作をお願いいたします。

Q.契約締結後に原本を保存とありますが、どういうことですか?

A. 原本データはクラウドサイン上に保存されますが、弊社ではお客様におかれましても原本の保存をお願いしております。
またクラウドサインでは、最終同意時から24時間をかけて電子署名の付与を行います。
最後の電子署名付与後(=最終同意から24時間経過後)のPDFデータをダウンロードし、保存をお願いいたします。

Q.クラウドサインで承認するにあたり、登録などは必要ですか?

A. お客様ご自身でのご登録は不要です。弊社がクラウドサインの登録を行っております。