構造コラム第31回「模型で学ぶ構造力学」

 工業高校や専門学校、大学などで建築構造を学ぶ時、最初に教わるのが構造力学です。柱や梁にどのような力がかかるかをひとつひとつ紐解いていきます。しかしながら、紙の上で「力を解く」という作業では、実際に力がはたらいたときに部材がどのように変形してどこで耐えているかは、イメージしにくいかもしれません。
そこで今回は、鉄筋コンクリート造の模型を使って力のかかり方を視覚的に解説しましょう。

 構造力学では、基本的に3つの力を使って釣り合いを考えます。3つの力とは軸力(引張、圧縮)・せん断力・曲げモーメントです。ではこの3つの力を、模型を使って見ていきましょう。

 まずは軸力です。部材を横に引っ張ったり押したりしたときに生じる力で、これは比較的イメージしやすいですね。模型を引っ張ると鉄筋が効いていることがよくわかります。

 次に、せん断力です。これは物を切断しようとする力で、身近なもので言うと、はさみで物を切るときにはたらく力です。例えば短い柱があったとき、左から力を受けるとこのように変形します。

 これはせん断力によって柱を真っ二つに切ろうとする力がはたらいていますね。ちなみにこのようにせん断力による破壊は、とても脆く危険な壊れ方をするので、構造設計ではなるべくせん断力で壊れないような設計をします。
 
 最後に、曲げモーメントです。この曲げモーメントは文字通り物を曲げようとする力です。純粋に曲げモーメントだけがかかると、断面には引張と圧縮がかかります。これを模型で見ると良くわかりますね。

片持ち梁だと根元に大きな曲げモーメントがかかることが分かります。

 このように、構造力学は紙の上だけでやっていると複雑で分かりにくいですが、視覚的に考えれば、案外シンプルなことだとわかります。大学の偉い先生や企業の研究者もたくさん実験をしています。わからなければ実際に造ってやってみる。これが正解へたどり着く確かな道しるべとなるのです。

構造コラム第18回「コンクリートのせん断ひび割れ」

現在の日本では、建築物の構造体に使われる材料は木・鋼・コンクリートが主流になっています。その中でもコンクリートは、鉄筋コンクリート造はもとより木造や鉄骨造の基礎にも使用され、最も多く使用される構造材料と言えるでしょう。

 

今回はそのようなコンクリートの性質についてご紹介します。

 

コンクリートはひび割れしやすく、乾燥収縮やクリープ荷重(長期的にかかる荷重から瞬間的にかかる荷重を引いたもの)で簡単にひび割れてしまいます。補修管理を怠ると、鉄筋が錆びたりコンクリート片が落下して重大な事故につながりかねません。

 

力学的には圧縮に強く、引張に弱いという特徴があります。引張力を受けると途端に割れてしまうため、構造計算ではコンクリートが引張に耐えることには期待しません。

さらにもうひとつ、力のかかり方に「せん断力」という力があります。この力は物を二つに分断しようとする力で、はさみで紙を切ることができるのは、紙にせん断力がはたらくからです。このせん断力とコンクリートの関係について詳説しましょう。

 

このようなモデルを考えてみましょう。

コンクリートには両端にせん断力がかかります。

せん断力がかかっている部分を細かく観察すると、斜め方向に引張力が作用しています。この力を「斜張力」といいます。先ほど述べたように、コンクリートは引張に弱いので、この斜張力と直交にひび割れが生じてしまいます。このひび割れを「せん断ひび割れ」と呼びます。

 

実際の建物では、このような形状をよく見かけます。

構造体の長さが短くなると、せん断破壊が起こりやすいという性質があり、この場合壁がない柱の部分にせん断力が集中してしまいます。すると

このように柱にせん断ひび割れが生じ、さらに力が加わるとせん断破壊が起こります。せん断破壊はとても脆い(ガラスのような壊れ方をする)性質があり、大変危険です。もちろん構造設計ではこのような破壊が生じないように設計しますが、地震の際、このようなひび割れを見つけた時は要注意ですね。