構造コラム第30回「建物のモデル化」

 物体の動きや強さなどを解析するとき、その形をそのまま作って解析すると、とてつもない時間がかかり、膨大な計算量となってしまいます。建築の構造計算をするときも例外ではありません。そこで、複雑な建物の形状を計算しやすいようにシンプルな形に置き換えます。この操作を「モデル化」といいます。
モデル化にもいろいろなものがあります。まず最初に行うモデル化は、柱や梁などを一本の線として置き換えます。これを「線材置換」といいます。

 次は建物を支えるところについてです。建築では支点と呼びます。支点には大きく分けて4種類に分けます。横に移動できるローラー、移動はできないが角度が自由に動くピン、移動はできず角度は力を加えた分だけ曲がる回転バネ、移動も回転も拘束された固定の4種類です。

 他にもいろいろな箇所でモデル化を行っています。また、計算方法が違うと建物全体で全く異なったモデル化をすることもあります。

 このように、一つの建物を解析するときに、いたるところでモデル化をしています。モデル化は計算が簡単になる反面、実際の建物とは大きく異なった性質になってしまうこともたくさんあります。そこは構造設計者の判断で、どのようなモデルを選択するか。設計者の腕の見せ所です。モデル化は、構造設計の中でも最も難しくもおもしろい分野だと思います。

構造コラム第29回「建物にはたらくちから」

 地球上にある建物にはさまざまな力がはたらきます。重力によるもの、気候によるもの、土や水など、その要因は多岐にわたります。構造計算では、建物にかかるであろうこれらの力に対して安全であることを確認しなければなりません。

 建物にかかる力の代表的なものをご紹介しましょう。力には、常に力がはたらいている「常時荷重」と突発的にはたらく「臨時荷重」とに大別できます。

 代表的な常時荷重には、固定荷重、積載荷重、土圧、水圧などがあります。
・固定荷重
 建物本体の自重のことで、柱や梁、壁や床、設備機器など移動することのない物の重さを合わせた力です。
・積載荷重
 建物内部において、移動することが想定される力のことです。
例えば、家具や人は積載荷重に含まれます。特に倉庫などは、どのような物を置くかを把握し、厳密に算定しなければなりません。
他にも部屋の用途によって、この積載荷重は細かく定められています。
・土圧
 地下にある壁をイメージしてください。片側は土に接しており、もう片方は土が無い場合、壁は土から横に押されるような力を受けます。これが土圧です。
土圧は土の種類(砂や粘土)などによってその性質は大きく変わります。
・水圧
 水圧は、深海に物を沈めると四方八方から力を受けてかなり小さくなってしまう現象でよく説明されますが、建築の場合問題になるのは地下水です。
地下水の位置が建物より上になると、浮力がはたらきます。

 一方、臨時荷重には、地震力、風圧力などがあります。
・地震力
 地震によって建物が受ける力のことです。
日本は世界でも有数の地震大国で、この地震力は建築基準法でもかなり厳格に算定方法が決められています。過去の地震被害から何回も法改正が行われてきましたが、大きな地震が起こるたびに被害が出てしまいます。
・風圧力
 風の力をあなどってはいけません。木造や鉄骨造などの軽い建物は、地震よりも風の力の方が強いこともあるのです。風圧力も地震力同様、過去の台風被害などから地域ごとに細かく定められています。

 その他
・積雪荷重
常時荷重と臨時荷重のどちらともいえないのが、雪の重さによる積雪荷重です。
積雪荷重は、地域によって常時荷重としてみるのか臨時荷重としてみるのかが変わります。北陸地方や東北地方など、雪がたくさん降る地域は、常時荷重として考慮しなければなりません。

 ちなみに構造計算では、この常時荷重を「長期荷重」、常時荷重と臨時荷重を合わせたものを「短期荷重」と呼び、それぞれに対して安全であることを証明しなければならないのです。

構造コラム第28回「構造設計ってなにやるの?」

 構造設計は、地震や台風などの自然災害から、人命や財産を守るとても大事な工程です。しかし、構造設計をやったことがない人にとっては、何をやっているのかわからない未知の領域です。そこで今回は、構造設計とはどういうことをしているのか、簡単に解説します。

 天井から針金を使っておもりを吊るすとしましょう。左の図のように、1本の針金を使っておもりを吊るすとき、おもりの重さに耐えられるような、切れない太さの針金を決めます。

 次に右の図では、斜めに針金が取り付いています。それぞれの針金にかかる力はどれくらいか、そして重さに耐えるにはどのくらいの太さの針金が必要かを考えます。さらに、天井と針金の接合部分はおもりの重さに耐えることができるか。おもりと針金の接合部分は針金が切れる前に壊れたりしないか。といったことも検討します。

 実際の構造設計では、まず針金をどこにどう配置するか。すなわちどこに柱を配置し、梁をどう架ければ、安全でかつコストを抑えることができるかを考えます。この工程を「構造計画」といいます。

 次に、その針金にかかる力はいくらで、どれくらいの太さならば耐えることができるか。すなわち柱や梁にどのような力がかかり、どれくらいのサイズならば安全であるかを探ります。この工程を「構造計算」といいます。

 そして、柱や梁をどう配置するか、どれくらいのサイズかを「構造図」として作図します。

 この一連の作業が「構造設計」なのです。構造設計をやるまでは「なんだか難しそうだな」と思っていましたが、いざやってみると「…想像していたよりはるかに難しい」というのが正直な感想です。それだけ奥が深い分野と言えますね。

構造コラム第27回「塔状比と基礎計画」

今回は、建物の高さと幅の比率と基礎計画ついての話です。

 

建物の高さ/建物の幅の比を塔状比と言います。

この塔状比が基礎の計画の目安になります。

 

 

 

この塔状比が2.5未満ですと、直接基礎の場合は常時荷重が支配的です。

必要地耐力は長期時の接地圧を考慮して検討します。

 

 

この塔状比が2.5以上となると、直接基礎の場合に地震時荷重の影響が出てきます。

必要地耐力は短期時の接地圧も考慮して検討します。

 

 

この塔状比が4未満ですと、杭基礎の場合は柱が押し込む力が支配的です。

杭は、長期軸力,短期軸力を考慮して必要支持力(=杭径)を検討します。

 

この塔状比が4以上となると、建物が倒れないように計画する必要が出てきます。

支点(柱下の杭位置)に引抜きが発生する可能性が高くなるためです。

杭は、地震時の引抜抵抗力を考慮して検討します。

 

また、この塔状比が大きくなればなるほど、杭に求められる引抜抵抗力も大きくなります。

そして、この引抜抵抗力は杭表面と地面との摩擦力が主たる要因です。

従って、場所打ち杭とした場合は杭径を大きくして杭表面積を大きくします。

 

 

 

 

 

建物形状によっては、部分的に塔状比2.5以上ないし4.0以上の場合があるかと思われます。

この時は前述の目安で考えると、部分的に地震力の影響が大きい直接基礎、部分的に引抜抵抗力の大きい杭基礎での設計が考えられます。

 

 

ここで、上図のように敷地境界までが狭い時の、直接基礎+地盤改良の場合を考えます。

まず、どのような改良工法であれ、一般的に一つの建物に対して部分的に改良体を変えることは行っておりません。

従って、『建物の殆どの部分で塔状比2.5未満だが、一部が2.5以上となる建物』の場合、その一部で必要となる短期接地圧が改良地盤の強度を決定する事があります。

(部分的に基礎面積を大きくして、短期接地圧と長期接地圧のバランスをとる方法もあります)

 

 

以上の様に、塔状比(建物の高さと幅の比)によって基礎計画が変わってきます。

構造種別、階数、高さ、面積などが似通っていても、建物形状が違えば(部分塔状など)、杭径や必要地耐力が変わってくるのはこのためです。

 

特に狭小地では、杭が打設できるか否かや、直接基礎を大きくできるかの問題点も含んでいます。

 

 

建物を計画する際には、塔状比が基礎計画へ影響することを考慮いただけると幸いです。

構造コラム第26回「ピロティとピロティ形式」

建築用語で「ピロティ」という言葉があります。日本建築学会編「建築学用語辞典」(岩波書店)によると、ピロティは「建築物の一階部分で、壁によって囲われず、柱だけの外部に開かれた空間」と記載されています。

 

前述の「柱だけの外部に開かれた空間」であるピロティは、意匠的な意味で書かれています。しなしながら、構造の観点での「ピロティ」は少々意味合いが異なります。

 

構造上のピロティは、ある階に地震の揺れに抵抗する壁(以下耐力壁)がある場合、その直下階には耐力壁が無く、柱だけで地震に抵抗する形式を指します。このような形式は、意匠上のピロティと区別するため、「ピロティ形式」や「ピロティ構造」と呼ばれます。また、ピロティ形式の柱を「ピロティ柱」や「下階壁抜け柱」といいます。

 

 

このピロティ形式の最も典型的な例をご紹介します。マンションなどでは、一般的に住戸の境界壁を耐力壁として設計します。しかし、1階はコンビニや駐車場にするため、耐力壁を抜いて広々とした空間となるよう計画します。このような建物はピロティ形式の建築物であり、1階を「ピロティ階」と呼びます。

 

 

ピロティ形式は構造上の弱点になってしまう場合が多く、過去の大きな地震被害でも、マンションの駐車場が潰れてしまった映像や写真をご覧になった方もいらっしゃると思います。もちろん構造設計ではピロティ階で崩壊しないように、ピロティ柱に鉄筋を多く入れ、地震に耐えられるように設計します。ですが、想定以上の地震が来た場合はどうしてもピロティ階に被害が集中してしまいます。

 

一方で、ピロティ(意匠上のピロティを含む)のおかげで被害が軽減したという事例が報告されています※1。東日本大震災では津波による被害が顕著でしたが、ピロティで外壁が無かったために、津波のエネルギーを受けなかったと分析されています。

 

身近な建物がピロティ形式かどうか確認しておくと、いざという時に有効な避難に役立ちそうですね。

 

参考文献

※1 田中 礼治、澁谷 陽:津波とピロティ構造 (特集 東北地方太平洋沖地震5周年「震災復興と地震・津波対策技術」(その1)) 日本地震工学会誌 = Bulletin of JAEE / 日本地震工学会 編 (27) 2016-02p.36-41

構造コラム第24回「全体崩壊と層崩壊」

現行の構造計算は、稀に発生する中程度の地震(震度4~5弱程度)に対して「柱や梁が損傷しないことを目標」とする一次設計、極めて稀に発生する最大級の地震(震度6強程度)に対して「柱や梁に損傷が生じても、倒壊・崩壊しないことを目標」とする二次設計に大別されます。今回はこの二次設計に着目してお話します。

 

前述のとおり、二次設計では柱や梁が部分的に壊れることを許容しますが、倒壊・崩壊しないようにと定められています。柱や梁が壊れても、建物全体が倒壊・崩壊しないとは一体どのような状態なのでしょう。

 

建物全体の壊れ方には、大きく分けると2通りあります。梁が先行して壊れる「全体崩壊」と、柱が先行して壊れる「層崩壊」です。

 

 

全体崩壊は梁が壊れて変形がどんどん進み、地震のエネルギーを「ひずみエネルギー」に変換して地震に耐えようとする設計です。一方層崩壊は、梁よりも柱が先に壊れてしまいます。この状態では壊れた柱は上からの荷重に耐えきれずに潰れてしまいます。図だと2階にいる人はまず助からないでしょう。

 

設計ではなるべく層崩壊を避け、全体崩壊となるようにしますが、層崩壊となってしまう場合でも、柱が壊れた時点で想定される地震に耐えていれば問題ありません。

 

しかしながら実際に地震が起きた場合、設計で想定した壊れ方にならないことがよくあります。特にこの層崩壊になりやすい建物があります。1階に駐車場のあるマンションです。マンションの住戸部分は地震に抵抗する壁がたくさんありますが、1階の駐車場は壁がない場合がほとんどです。このような形状では1階の柱が先行して壊れてしまうことがあります。

 

もちろん設計では全体崩壊とする、あるいは層崩壊が起こる前に地震に耐える設計としていますが、実際はそううまくはいきません。

 

地震被害などで、1階の駐車場が潰れて車がぺしゃんこになっている写真を見たことがある人もおられると思います。あれはまさに1階で層崩壊を起こしてしまったのです。

 

このように、「この建物はどこが弱点でどう壊れるか」を考えながら建物を眺めてみると、建物への見方が少し変わるかもしれませんね。

構造コラム第21回「振動解析への誘い」

構造設計は、数多くの「仮定」のもとに成り立っています。とりわけ地震の力と建物の挙動は、仮定の上に仮定が重なるようにして計算しています。低中層の建物は、過去の地震被害や多くの実験などの実績があり、現行の計算方法が「あながち間違いではない」ということは経験的に分かっているのです。

一方、超高層建築物(高さ60m超)は日本で建設されてから日が浅く、地震に対して建物がどう動くか、どのような被害が出るかということは、実際のところ「よくわかっていない」というのが実状です。そこで、より現実に近い状態で精密なシミュレーションを行うため、超高層建築物には振動解析(時刻歴応答解析)という計算が義務付けられています。(ちなみに振動解析は、ラケットや家電、自動車や航空機にも行われています。)

しかしながら、超高層の設計に携わったことのある構造設計者はほんのひと握りです。つまり大多数の構造設計者にとって、振動解析は「自分には手の届かないもの」「仕事には役立たないもの」なのです。実際私も学生のころは、構造設計者は振動解析の技術を持ち、ベテランともなれば皆一度は超高層の設計に携わったことがあるのだろうと思っていました。ですが現実はそうではなく、自ら望み、その世界へ飛び込まなければ決して出会うことのないものだと痛感しました。

ではこの先も、超高層に携わらない構造設計者は振動解析に対して無関心でいいのでしょうか。決してそんなことはありません。構造設計者は構造設計の専門家であり、知らなくていい事柄など一つとして無いのです。今の低中層の計算方法にも振動解析の考えが数多く取り入れられており、将来低中層の建物にも振動解析が義務化されるかもしれません。ですから、構造設計者はもとより、意匠・設備設計者や一般の方々にも、何をやっているかぐらいは知っておいていただけると幸いです。

ここでほんの少しだけ、振動解析の世界をご紹介しましょう。

「F=ma」
という式をご存知でしょうか。これは、「力(慣性力)は質量と加速度の積」というニュートンの第2法則を示した式です。なんだか中学校か高校の物理で習った記憶があります。

低中層建物の構造設計はこの法則に基づいて、地震によって建物にどれだけの加速度aがはたらくかを想定し、どれだけの力Fがかかるかを計算します。電車や車に乗っているとき、急激な加速や減速があると、誰かに押されたような感覚になります。地震が起こった時に、建物にもこれと同じ現象が起こっているのです。

私達にとって一番身近な加速度といえば、重力加速度ですね。これは地球上であれば変わることはありません。地震によって建物にどれだけの力がかかるかは、この重力加速度を基準に考えます。建物にかかる加速度をa、重力加速度をgとすると、建物の自重に対してa/gという割合で力がかかると想定し、このa/gについて震度4程度では0.2や0.3、震度6強程度では1.0を基本としています。そしてこのa/gを震度と呼びます。

この計算方法は、地震で左右どちらか一方から押されたときに、「押された直後のある瞬間」を抜き取って考えているのです。これは低中層の構造計算で最も一般的に用いられ、「静的解析」といいます。ある瞬間なので揺れることはなく、「静か」なのです。

次にこの「F=ma」を少し変化させましょう。

「F-ma=0」
ただ移項させただけのようにみえます。もちろん数学的にはそうなのですが、工学的には重要な意味を持ちます。

地震で押された後のことを考えてみましょう。柱や梁は押されて変形した後、元に戻ろうとします。この力を「復元力」といいます。地震で揺れる度に、建物には慣性力と復元力がかかり、上の式はこの二つの力が動きながら常に釣り合っていることを意味しています。これは振動解析の考え方の基礎となるものであり、これらの計算を総称して「動的解析」といいます。動的解析には時間の概念が加わるので、静的解析より複雑になってしまいます。

この移項した式を「d’Alembert(ダランベール)の原理」といいます。

実際の振動解析では、これらに空気抵抗や摩擦による揺れの減衰を考慮します。復元力も一定とは限りません。そして時々刻々と変化する地面からの加速度に対して、ある時間分ごとに計算を行います。

建物を解析するとき、床の位置にその階の質量を集めた点をつくり、計算が簡単になるように建物を簡略化するようにします。この質量を集めた点を「質点(しってん)」といい、このようなモデルを通称「串団子モデル」と呼びます。見ての通りおだんごのようですね。

解析ではこの質点ひとつひとつについて、どのような力がかかり、どのように動くかを解析します。
さらに建物はこの質点の数だけ揺れのパターンがあり、それらをひとつずつ解析しなければなりません。
20階建てなら20パターン、30階建てなら30パターンあり、それぞれのパターンに対して、全ての質点を解析します。

これをある時間分ごとに計算していくわけですが、一般的に建物の振動解析では、0.01秒や0.001秒ごとに行うことが一般的です。例えば3分間(180秒)建物の揺れを0.001秒ごとに確認したければ、180/0.001=180000回この計算を繰り返すことになります。

非常に大雑把な説明でしたが、振動解析のイメージを掴んでいただけたでしょうか。これだけ膨大な計算を人間が手計算でやろうとすると、一生かかってもできないでしょう。振動解析はコンピュータが発展したからこそ確立した計算方法であり、これからの構造設計には欠かせない技術であることは明白です。そして、構造設計者はさらなる技術発展に寄与し、少しでも被害を軽減させて社会に貢献するという責務を負っているのです。

構造コラム第17回「ねじれ剛性」

四号建物を設計するとき、仕様規定(建築基準法施行令36条~80条の3)のみを満たしていれば、安全であると判断していませんか。

もちろん満たすことは最低限のルールですが、キチンとした構造計算をした方がよい場合も存在します。

例えば、上記のような木造の建物【A】・【B】を考えてみます。

どちらも同様の基礎形式として、壁量の規定(施行令46条)など仕様規定を満足できます。

法律上はどちらも問題がないように思いますが、構造上は【B】が安全な建物であると判断できます。

ポイントは、壁位置にあります。

構造上では、両者の【ねじれ剛性】(ねじれに対するかたさ)に差があると言います。

【ねじれ剛性】は、【剛心(剛性の中心)から壁(地震力抵抗要素)までの距離】×【壁の剛性(かたさ)】に依存しています。

つまり、【A】と【B】においては、両者の壁量が変わらないため、できるだけ外周部に壁があるほど、ねじれにくい安全な建物であると判断できるのです。

ご覧の通り、【B】に比べ【A】の建物は中心部に壁が集中しており、ねじれ剛性が小さい建物と判断できます。

法律上は、仕様規定を満足していれば問題ありませんが、実際に構造解析をするとねじれの影響もあり、【外周部の柱が大きく変形する】ため注意を要します。

 

このように法律上は満足していても、実際に構造解析をすると注意が必要な場合が数多く存在します。

今回は、その一例として【ねじれ剛性】をご紹介しました。

 

構造コラム第16回「構造設計と各種規基準と地震」

建築基準法及び関連法令で建築物に求められる性能は、極めて稀に起こる地震時に建築物が崩壊しないという性能になります。
要は、大震災時に建物が崩れない様にし、避難ができる状態を確保しましょうと言うことです。

そして、建築基準法,関係法令はその性能を確保するための最低限を規定しています。
関係法令とは別に、構造設計の規準などが有ります。
こちらもその性能を確保するには、どの様な検討を行えば良いのかなどが書かれています。
※各規基準は、改正・改訂された時点で現実的な対策が取れる状況に対しての性能になります。

従って、各規基準を満たす(その建築物設計時点で考えられる最低限の性能)=極めて稀に起こる地震時に建物が崩れないであろう となります。
建物にどの程度の余力を持たせれば崩れない建物となるのかは、わかっていません。
※天災であり、建築地や施工状況,建物の使用状況,築年数など様々な要因もあるので、『崩れないであろう』という表現になってしまいます。
また、崩壊しない建物を作ろうとすると、コストやプランの面で現実的ではない場合もあると思われます。
(耐震診断・耐震改修についても同様)

お気づきかはと思いますが、崩壊しなかった建物が、その地震の前と同様に使用可能どうかについて一切ふれていません。
また、たとえ上家の被害が軽度で使用可能であっても、基礎が使用不可能な被害を受けてしまえば、結果として建物は使用不可となってしまいます。
(基礎の研究については上家ほど進んでいないようです)

構造設計とは、建物を如何に崩壊から遠ざけ、使用可能な建物に近づけるのかを設計するという事なのです。

構造コラム第13回「震度と構造計算」

「この建物はどのくらいの震度までもつの?」「震度7に耐えられるようにしてほしい!」
というお言葉をしばしば耳にします。

今回は、震度と構造計算の関係についてご紹介します。
現在気象庁の震度階は「0~4、5弱、5強、6弱、6強、7」の10階級となっています。
これはみなさん馴染みのある表現だと思います。
ちなみに、これまでに震度7を観測した地震は、気象庁が1949年に震度7の震度階級を設定してから5回あります(平成29年6月1日現在)

・「平成7年(1997年))兵庫県南部地震」
・「平成16年(2004年)新潟県中越地震」:新潟県川口町※(計測震度6.5) ※現:新潟県長岡市
・「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」:宮城県栗原市(計測震度6.6)
・「平成28年(2016年)熊本地震」の4月14日の地震(M6.5):熊本県益城町(計測震度6.6)
・「平成28年(2016年)熊本地震」の4月16日の地震(M7.3):熊本県益城町(計測震度6.7)、熊本県西原村(計測震度6.6)

一方構造計算では、この震度階をどの様に扱っているのでしょう。

実は建築基準法の構造計算のなかでは「震度」という考え方は存在しません。
厳密にいうと、地震によって建物が受ける加速度がどれくらいなのか、その加速度で建物に生じる力がどのくらいかということが定められています。これについては別の機会に詳しくお話ししましょう。

ですから建築基準法をクリアした建物がどの程度の地震に耐えるのかはなかなか特定できません。構造計算では地震の規模を「中地震時」と「大地震時」という2種類で表現します。
中地震時…建物の耐用年限中に2~3回発生する地震で、柱や梁はひび割れ程度の損傷しか受けない。
大地震時…建物の耐用年限中に1回発生するかもしれない地震で、柱などが折れたりして建物が倒壊せず、人命を守る。
という目標で設計を行います。

じゃあそれが震度とどういう関係なの?ということになりますね。
気象庁の震度階級で表現すると
中地震は「震度5弱程度」、大地震時は「震度6強程度」
を想定しているといわれています。

ちなみに、「震度7」というのは上限がありません。震度6強に近い「震度7」もあれば、大げさに言うと大地が割れて地上の建物が全て倒壊してしまうような大激震でも「震度7」なのです。つまり「震度7に耐える!!」というのは正しい表現ではありません。ですから「震度6強程度」としているのです。

ですが、構造計算の大地震を超えるような地震が実際起こっているのも事実です。過去の地震によって大きな被害を受けるたびに、法律の改正が行われてきましたが、現行の建築基準法も完璧ではありません。

過去の教訓を踏まえ、それぞれの土地や建物の特性を十分理解したうえで構造設計を行う必要があるのです。

出典
・気象庁HP
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/
・一般社団法人 日本建築構造技術者協会 (JSCA)
パンフレット「安心できる建物をつくるために」