構造コラム第20回「建物の『バランス』-剛性率と偏心率-」

みなさんは、建物の『バランス』を考えたことはありますでしょうか。

例えば、木造の建物で告示上の耐力壁の量が足りていても、実際に構造計算をすると建物のバランスが悪いため、想定よりも大きな力が働き、部材が大きくなってしまう場合があります。

では、建物の『バランス』の良し悪しは建物のどこに宿っているのでしょうか。
今回は、建物の『バランス』を考える際の構造上の指標についてご紹介します。

構造上の建物のバランスを計る指標として、『剛性率』、『偏心率』という2つの考え方があります。
この2つの指標を満たすことで、構造上は『建物のバランスがよい』と考えます。

まず、『剛性率』とは『立面的なバランス』を計る指標になります。

図①

図①は、柱・梁が同じ部材である建物として考えます。
上図の通り、図左側の建物は各階の階高がほぼ等しく、
【地震に対して各層が均等に変形する=各層の剛性率がほぼ同じ値になる】
ことが予想されます。
一方、図右側のような吹き抜けなどが存在し、一部の階高が突出して高い建物の場合は様子が異なります。
図右側の建物では、
【階高の高い層の変形が大きくなり、上下階とのバランスを見ると、その層のみ柔らかくなる=階高の高い層のみ剛性率が小さくなる】
ことが予想されます。

図をご覧の通り、階高の高い層に力が集中してしまい、その層のみ被害が大きくなる恐れがあるため、構造上注意を要します。
この場合は、階高の高い層のみを強度の高い柱断面に変更するといった構造的な対策をする必要があります。

このように高さ方向の『立面的なバランス』を計る指標が『剛性率』になります。

次に、『偏心率』とは『平面的なバランス』を計る指標になります。

図②

図②は、平面的にバランスがよい建物になります。
建物の平面的なバランスを考える際には、
【各方向の地震力ごとに耐震要素を分解する】
ことが重要になります。
各方向の地震力に対して、耐震要素がどのように配置されているかを見ることで平面的なバランスがわかります。

ご覧の通り、図②の建物は、どちらの方向の地震力に対しても上下、左右にバランスよく配置されていることがわかります。
このような建物の場合には、地震に対しても大きな偏りなく、抵抗することができると考えられます。

では、平面的なバランスが悪い場合として、南側に大開口を設けた場合を考えてみましょう。

図③

上図の通り、X方向の地震に対して平面的なバランスが取れていないことがわかります。
建物上下で耐震要素のバランスが悪く、建物下側の耐力壁に大きな力が働くことが予想されます。
この場合は、偏心率が大きくなり、ある一定の数値を超えると、構造計算上割増係数をかけて耐力に余裕を見る必要があります。

このように耐震要素の配置による『平面的なバランス』を計る指標が、『偏心率』になります。

告示に則り建物を設計していると、耐力壁や、柱の数など部材の『量』にのみどうしても目がいってしまいます。
もちろん部材の『量』を満たすことは重要ではありますが、その上で部材の『バランス』まで気を配ることができれば、必要以上の部材がなくなり、すっきりとしたデザインが実現できます。