構造コラム第17回「ねじれ剛性」

四号建物を設計するとき、仕様規定(建築基準法施行令36条~80条の3)のみを満たしていれば、安全であると判断していませんか。

もちろん満たすことは最低限のルールですが、キチンとした構造計算をした方がよい場合も存在します。

例えば、上記のような木造の建物【A】・【B】を考えてみます。

どちらも同様の基礎形式として、壁量の規定(施行令46条)など仕様規定を満足できます。

法律上はどちらも問題がないように思いますが、構造上は【B】が安全な建物であると判断できます。

ポイントは、壁位置にあります。

構造上では、両者の【ねじれ剛性】(ねじれに対するかたさ)に差があると言います。

【ねじれ剛性】は、【剛心(剛性の中心)から壁(地震力抵抗要素)までの距離】×【壁の剛性(かたさ)】に依存しています。

つまり、【A】と【B】においては、両者の壁量が変わらないため、できるだけ外周部に壁があるほど、ねじれにくい安全な建物であると判断できるのです。

ご覧の通り、【B】に比べ【A】の建物は中心部に壁が集中しており、ねじれ剛性が小さい建物と判断できます。

法律上は、仕様規定を満足していれば問題ありませんが、実際に構造解析をするとねじれの影響もあり、【外周部の柱が大きく変形する】ため注意を要します。

 

このように法律上は満足していても、実際に構造解析をすると注意が必要な場合が数多く存在します。

今回は、その一例として【ねじれ剛性】をご紹介しました。

 

構造コラム第16回「構造設計と各種規基準と地震」

建築基準法及び関連法令で建築物に求められる性能は、極めて稀に起こる地震時に建築物が崩壊しないという性能になります。
要は、大震災時に建物が崩れない様にし、避難ができる状態を確保しましょうと言うことです。

そして、建築基準法,関係法令はその性能を確保するための最低限を規定しています。
関係法令とは別に、構造設計の規準などが有ります。
こちらもその性能を確保するには、どの様な検討を行えば良いのかなどが書かれています。
※各規基準は、改正・改訂された時点で現実的な対策が取れる状況に対しての性能になります。

従って、各規基準を満たす(その建築物設計時点で考えられる最低限の性能)=極めて稀に起こる地震時に建物が崩れないであろう となります。
建物にどの程度の余力を持たせれば崩れない建物となるのかは、わかっていません。
※天災であり、建築地や施工状況,建物の使用状況,築年数など様々な要因もあるので、『崩れないであろう』という表現になってしまいます。
また、崩壊しない建物を作ろうとすると、コストやプランの面で現実的ではない場合もあると思われます。
(耐震診断・耐震改修についても同様)

お気づきかはと思いますが、崩壊しなかった建物が、その地震の前と同様に使用可能どうかについて一切ふれていません。
また、たとえ上家の被害が軽度で使用可能であっても、基礎が使用不可能な被害を受けてしまえば、結果として建物は使用不可となってしまいます。
(基礎の研究については上家ほど進んでいないようです)

構造設計とは、建物を如何に崩壊から遠ざけ、使用可能な建物に近づけるのかを設計するという事なのです。

構造コラム第13回「震度と構造計算」

「この建物はどのくらいの震度までもつの?」「震度7に耐えられるようにしてほしい!」
というお言葉をしばしば耳にします。

今回は、震度と構造計算の関係についてご紹介します。
現在気象庁の震度階は「0~4、5弱、5強、6弱、6強、7」の10階級となっています。
これはみなさん馴染みのある表現だと思います。
ちなみに、これまでに震度7を観測した地震は、気象庁が1949年に震度7の震度階級を設定してから5回あります(平成29年6月1日現在)

・「平成7年(1997年))兵庫県南部地震」
・「平成16年(2004年)新潟県中越地震」:新潟県川口町※(計測震度6.5) ※現:新潟県長岡市
・「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」:宮城県栗原市(計測震度6.6)
・「平成28年(2016年)熊本地震」の4月14日の地震(M6.5):熊本県益城町(計測震度6.6)
・「平成28年(2016年)熊本地震」の4月16日の地震(M7.3):熊本県益城町(計測震度6.7)、熊本県西原村(計測震度6.6)

一方構造計算では、この震度階をどの様に扱っているのでしょう。

実は建築基準法の構造計算のなかでは「震度」という考え方は存在しません。
厳密にいうと、地震によって建物が受ける加速度がどれくらいなのか、その加速度で建物に生じる力がどのくらいかということが定められています。これについては別の機会に詳しくお話ししましょう。

ですから建築基準法をクリアした建物がどの程度の地震に耐えるのかはなかなか特定できません。構造計算では地震の規模を「中地震時」と「大地震時」という2種類で表現します。
中地震時…建物の耐用年限中に2~3回発生する地震で、柱や梁はひび割れ程度の損傷しか受けない。
大地震時…建物の耐用年限中に1回発生するかもしれない地震で、柱などが折れたりして建物が倒壊せず、人命を守る。
という目標で設計を行います。

じゃあそれが震度とどういう関係なの?ということになりますね。
気象庁の震度階級で表現すると
中地震は「震度5弱程度」、大地震時は「震度6強程度」
を想定しているといわれています。

ちなみに、「震度7」というのは上限がありません。震度6強に近い「震度7」もあれば、大げさに言うと大地が割れて地上の建物が全て倒壊してしまうような大激震でも「震度7」なのです。つまり「震度7に耐える!!」というのは正しい表現ではありません。ですから「震度6強程度」としているのです。

ですが、構造計算の大地震を超えるような地震が実際起こっているのも事実です。過去の地震によって大きな被害を受けるたびに、法律の改正が行われてきましたが、現行の建築基準法も完璧ではありません。

過去の教訓を踏まえ、それぞれの土地や建物の特性を十分理解したうえで構造設計を行う必要があるのです。

出典
・気象庁HP
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/
・一般社団法人 日本建築構造技術者協会 (JSCA)
パンフレット「安心できる建物をつくるために」

構造コラム第12回「4号特例(平屋or2階建ての木造住宅)の上家の設計について」

4号特例とは、建築士が設計した建築物であれば、確認申請時に申請図書の一部省略ができる特例になります。
省略できる申請図書には、構造設計図書が入っています。
申請の際に構造設計図書の添付が省略可能なだけであって、構造規定の適合が不要になるわけではありません。
建築士の責任において構造規定に適合させる必要があります。

では、どのように安全性の確認を行うのかと言うと、主に下記①②にて行います。

①壁量計算,告示金物などを満足する。
存在壁量 > 必要壁量 を満足すること,告示金物 を満足すること など。

壁量や金物などの告示の規定あり。
必要な『梁断面や床構面など』の規定なし。

簡単に言い換えると“2階建て木造住宅には、一定以上の壁及び、その壁に見合った金物が必要ですよ”と言う内容です。

もっと極端に言い換えると、壁量計算の名前の通り『耐力壁と金物だけ考える』となります。

②許容応力度計算を満足する。
許容応力度設計規準を満足する。

必要な『柱梁断面や床構面、壁量や金物など』の設計規準あり。

簡単に言い換えると“①+バランスの良い壁配置+壁と壁はしっかりした床でつなぐなど建物全体で設計しますよ”と言う内容です。

『鉄骨造や鉄筋コンクリート造と設計のベースとなる考え方が同じ』となります。

実施設計段階で、『許容応力度計算を壁量計算と同じように考えられないのか?』というお言葉をいただくこともあります。
上でご案内しましたように、それぞれの計算方法で安全性を確保するための考え方が違いますので、出来かねております。

また、一般的に耐震等級や長期優良住宅の設計は、許容応力度計算にて行っております。
お施主様のご要望に合わせた設計手法のご依頼をお願いいたします。