構造コラム第10回「片持ち材について」

第6回において片持ち床の作り方をご紹介いたしました。

今回は、第6回の最終行『何故、片持ち床周辺の懐に余裕が必要なのか?』を『片持ち材の検討』を通してご紹介したいと思います。

●1点目
建築基準法に使用上の支障の検討というものがあり、部材のたわみ量に対して上限が決まっています。
片持ち材は部材の根元でしか繋がっていないため、たわみやすい部材です。
そして、この『たわみにくさ』を向上させるには、成(スラブ厚・梁成)を大きくする方が効果が高いのです。

●2点目
片持ち長さが2mを超えた場合に、短期地震時の縦揺れの検討が必要になります。
この場合の短期地震時の検討は、下記の式で行えます。
『 短期検討用荷重 = 長期荷重 + 鉛直震度1.0の地震時荷重 』

「鉛直震度1.0の地震時荷重」=「地震時の縦揺れ荷重は長期荷重*1.0の荷重とする」 という意味です。

従って、片持ち長さが2mを超えた場合の短期時は、長期荷重の2倍の力で検討することになります。
短期時の部材耐力は長期時の1.5倍ですので、長期の2倍の荷重/長期の1.5倍の耐力という検討になります。

例えば、長期荷重が100,長期耐力が150の場合
 →長期時は、100/150=0.67 約30%の余裕があります。
 →短期時は、(2*100)/(1.5*150)=0.89 約10%の余裕に減ります。

仮に、短期時に20%の余裕を確保しようとすると、0.89/0.8=約1.2となり当初の部材の1.2倍の耐力が必要ということになります。

部材耐力を大きくする時も、成(スラブ厚さ・梁成)を大きくする方が効果が高いです。
また、スラブの片持ち長さが2mを超えた場合は安全性に配慮し、片持ち梁を設けるなどを行います。
片持ち梁を設けた場合には受梁も設けます。(コラム第6回参照)
この受梁は、片持ち梁と繋がっており応力が伝達するので、片持ち梁と同じ耐力が必要になります。
そして、この受梁は室内側に設けますので、天井懐のスペースが必要になります。

以上2点より、片持ち材(床)の周辺の懐には余裕が必要となるわけです。

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構造コラム第9回「柔能く剛を制す!?」

「地震に対して、建物は固い方が良いのか、柔らかい方が良いのか」
日本の構造設計が暁を迎える頃、そんな議論が行われていました。

時代背景は、関東大震災(1923年、大正12年)から昭和初期にかけて
いよいよ鉄筋コンクリートの建物が建ちはじめた頃でした。

まずこの話をする際に紹介しなければならない人物が二人います。

一人目は、佐野 利器(さの としかた、1880年-1956年)
東京帝国大学教授、帝都復興院理事、東京市建築局長等
「家屋耐震構造論」(1915年(大正4年))で工学博士号を取得。
この論文は日本の建築構造学の基礎を築いたものと評され
建築構造の耐震理論構築としては当時世界初の試みでした。

二人目は、真島 健三郎(ましま けんざぶろう、1873年-1941年)
日本の海軍省建築局長、海軍技師であり、構造エンジニアでした。
日本の鉄筋コンクリート構造のパイオニア的存在です。

二人の立場を簡単に表すと
佐野は「建物はしっかり固めて建てよ」いわゆる剛派です。

対して真島は「建物は地震の力を受け流せるよう柔らかく建てよ」
「柳に風」といったところでしょうか。

関東大震災の直後、市街地建築物法(建築基準法の前身)を改正
ここで水平震度0.1という耐震規定が定められました。
この0.1という数字は、佐野が提唱した「震度法」に基づくものでした。

これに異を唱えたのが真島でした。
真島は建物と地震の共振現象を紹介したうえで、建物の固有周期が一律ではないのに
0.1で統一するのは危険であると言うのです。
真島は関東大震災で鉄筋コンクリート建物が大きな亀裂を受けたことなどを踏まえ
「西洋の耐震構造を地震大国である日本に持ち込むのはいかがなものか。
日本は五重塔のように長年地震に耐えながら建っている柔構造の被害が少ない。」
ということを主張しました。

これは現代の振動解析に通じる考えですが
当時は計算プログラムはおろか、電卓すら存在しない時代です。
波動は単純なものでしか計算できませんでした。

これについて佐野は「耐震構造上の諸説」(大正15年10月)で
真島の理論は単純化していると指摘します。

さらにこれに対し、真島が「佐野博士の耐震構造上の諸説を読む」(昭和2年4月)において
「一律に震度0.1で設計という考え方こそが単純化の極みではないか」と反論しています。

もうはっきり言ってこのあたりから論文は互いの批判合戦になっています。
しかもかなりけんか腰で嫌味たらしい言い方をしています。

そこに新星が登場します。
その人物は、武藤 清(むとう きよし、1903年-1989年)
彼は佐野の門下生として建築構造を学びました。ということは剛派ですね。

いくつかの論文で剛構造理論を展開し
「真島博士の柔構造論への疑い」(昭和6年3月)を発表します。当時28歳頃です。

この論文を受けて真島は
「柔構造論に対する武藤君の批評に答へ更に其の餘論(余論)を試み広く諸家の教を仰ぐ」(昭和6年5月)を発表します。

このあたりからもう収拾がつかない様相を呈しています。
しかしながらここから日本は戦争へと突入し、真島が海軍を辞めて論争は落ち着くことになります。

この佐野・武藤らによる剛派と、真島の柔派との論争を俗に「柔剛論争」と言います。

ところでこの柔と剛、建物にとってどちらが正解なのでしょうか。

…結論は「どちらかが絶対的に正解ではない」ということです。
双方の理論、考え方が現行の構造計算に反映されているのです。

ちなみに、剛派である武藤はその後
日本で初となる超高層ビル「霞が関ビル(昭和43年竣工)」の構造設計をすることになります。

この建物は、五重塔の構造をヒントにした柔構造であり
武藤は「超高層にはエネルギーの考えを取り入れた柔構造が適している」という結論に至ったのです。

このように、日本の構造設計技術は
先人たちの知恵と尽力の上に成り立っていることを忘れてはいけませんね。

※参考文献
真島健三郎:耐震家屋構造の選択に就て(土木学会誌、1924年4月)
佐野利器:耐震構造上の諸説(抄)(土木学会誌、1926年10月)
真島健三郎:佐野博士の耐震構造上の諸説(評論)を読む(建築雑誌、日本建築学会、1927年4月)
武藤清:家屋の耐震設計方針に就て(建築雑誌、1929年11月)
武藤清:真島博士の柔構造論への疑い(建築雑誌、1931年3月)
真島健三郎:柔構造論に対する武藤君の批評に答へ更に其の餘論を試み広く諸家の教を仰ぐ(建築雑誌、1931年5月)

構造コラム第8回「地盤調査と建物規模」

現在、主に使われている調査というと、スウェーデン式サウンディング試験とボーリング標準貫入試験になるかと思います。

スウェーデン式サウンディング試験は、表層付近の地盤の半回転数を測定します。
地層の種類としては、砂質土、粘性土の2種類に分けられます。

ボーリング標準貫入試験は、支持層までの間の1m毎のN値を測定します。
※支持層=N値50以上を5m以上確認できる硬い層
各深度で土を採取するので、地層の種類が判明します。
また、追加で孔内水平載荷試験や液状化の判定などが行えるので、スウェーデン式サウンディング試験よりも地盤の性質がわかります。
なお、基礎設計に用いる検討式はそのほとんどがN値を使用します。

地盤調査の種類と対象建物の目安は、下記になります。
・スウェーデン式サウンディング試験 → 木造住宅などの軽い建物(長期設計支持力30kN/m2以下)に採用
・ボーリング標準貫入試験 → 鉄骨造・RC造などの重い建物に採用

地盤調査については、地盤調査会社さんにご相談いただくのも宜しいかと思います。
計画する建物規模に合わせた地盤調査をお願いいたします。

2016,12

構造コラム第7回「木造の構造計画(梁・床編)」

第3回の耐力壁編に引き続き、木造物件のお見積時に意匠事務所様に
プランの調整をお願いすることが多い項目をご紹介します。
今回は梁などの架構や、床の水平構面に関することです。

○梁材
長さ>6m、梁せい>450の梁材は、通常は特注品となります。
施工会社・プレカット工場によって入手状況や機械加工が可能かどうかなどが異なります。

○梁せい
以下のような場合は梁せいが大きくなります。
①スパンの長い梁、多くの梁が架かっていて負担荷重が大きい梁
②オーバーハング部分の片持ち梁
③梁上に耐力壁が載る(耐力壁下に柱が無い)場合
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○床水平構面
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床は自重や積載荷重を支えるだけではなく、
地震力や風圧力などの水平力を耐力壁に伝達する役割があります。
耐力壁配置のバランスが悪い時には特に、床で伝達しなければならない水平力が大きくなります。

○吹抜け
火打ち・キャットウォークの設置ができない場合は、ゾーニングでの検討を行い、
A・Bそれぞれでバランスよく耐力壁を確保する必要があります。
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○スキップフロア
床段差(H)が梁せい以内の場合は一体の建物として検討できます。
(長期優良住宅の場合は扱いが異なります)
梁せいを超える場合は、スキップフロアとしてゾーニングでの検討を行い、
A・Bそれぞれでバランスよく耐力壁を確保する必要があります。
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第3回コラムと併せて、木造の計画の参考にしていただければと思います。
お見積りご依頼の際に、プランについて気になることがございましたらご相談ください。

参考:
『木質構造基礎理論』日本建築学会 編
『世界で一番くわしい木構造』山部豊彦 著

2016,11

構造コラム第6回「片持ち床」

今回は、バルコニーなどになる片持ち床の、一般的な作り方になります。

 
●木造の場合
・一方向に持ち出す場合
図①の様に下階に柱がある梁を持ち出して床を作ります。

・二方向に持ち出す場合
図②の様に下階に柱がある赤い梁を2段目(下段)で持ち出すとともに、直交方向の梁も持ち出します。

※概ね、持ち出した長さの2倍程度の長さの受梁が、持ち出さない側に必要です。
※持ち出し梁を一般的な材種・梁成とする場合は、持ち出し長さ910~1365程度が
目安になります。
※持出長さが長くなる場合は、梁成UP,材種UPが必要になります。
※赤い梁の右側に柱がない場合は、赤い梁と同レベルに梁を入れ赤い梁を支持します。

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●鉄骨造の場合
・一方向に持ち出す場合
図③の様に、柱・梁に片持ちを溶接+先端に梁を取り付けて、デッキプレートなどの床材を支持します。

・二方向に持ち出す場合
図④の様に、柱に片持ち梁を増やし片持ち梁先端へさらに片持ち梁を溶接します。

※片持ち梁には、受梁が必要です。
※持ち出し長さの目安は、2m程度になります。

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●鉄筋コンクリート造の場合
・一方向に持ち出す場合
図⑤の様に、持ち出し長さが2m以下ですと、片持ちスラブだけも可能になります。

・二方向に持ち出す場合
図⑥の様に、出隅部の片持ちスラブを支えるために、柱に片持ち梁が必要です。
この時も、持ち出し長さは2m以下とお考え下さい。

※片持ち梁には、受梁が必要です。
※どちらの場合でも、2m超となる際は片持ち梁などを設け安全性に配慮します。
(鉄骨造と同様の形状になります)
※仮に、2m超を片持ちスラブだけで作る場合は、スラブが厚くなります。

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ここまで見てきたように、片持ち部は通常の床を作るよりも梁材が必要になります。
また、片持ち長さが2m以上となりますと、上下方向の揺れを考慮して
荷重の割り増しが必要になります。
 
片持ち床周辺の懐には、十分な余裕の確保をお願いいたします。

構造コラム第5回「固有周期と共振現象」

この世に存在する全ての建物には、固有周期というものが存在します。

固有周期とは、建物が片側に揺れて、反対側にも揺れた後に元の位置に戻るまでの時間のことです。
固有周期は建物が重いと長くなり、堅くなると短くなるという性質を持っています。

一方で、地震の揺れは不規則です。
しかし、ある特定の固有周期を持つ建物に対して、突出して大きな被害をもたらす性質があることがわかってきました。
一口に地震と言っても、その性質はいろいろです。
固有周期の短い建物で被害が大きくなる周期の地震もあれば、固有周期の長い建物に対しても然りです。

この地震の持つ周期と、建物の固有周期が一致すると揺れが極めて大きくなってしまいます。

ぶらんこをイメージしてみて下さい。
ぶらんこの揺れるリズムに合わせて後ろから押されると、大きく揺れますね。あれと同じ現象です。

これを「共振現象」と言います。

建物の固有周期は、ある程度想定がつきます。
しかしながら、地震の周期成分なんてどうやって測ればいいのでしょうか。

 
ここで便利なグラフをご紹介します。

まずある固有周期を持つ建物を、特定の地震で揺らしてみましょう。
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揺れ始めから揺れがおさまるまでの間で、最も大きく揺れた値をマークします。

次に、いろいろな建物の固有周期に対して、同じ地震で揺らし、それぞれ最も大きく揺れた値をマークします。
これをグラフにするとこうなります。
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これをみれば、この地震はどの固有周期の建物が大きく揺れるか、一目瞭然ですね。
このグラフを「応答スペクトル」と呼びます。

実際の地震の応答スペクトルを見てみましょう。
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これは2016年4月の熊本地震(前震)の応答スペクトルです。

熊本地震では、木造の被害が顕著でした。
このグラフを見ると、固有周期1~1.3秒あたりの建物の揺れが大きくなっていますね。

ちなみに木造の固有周期は概ね0.1~0.5秒くらいですから、共振したとは言い難いです。
ではなぜこれだけ木造に大きな被害が出たのでしょうか。

実は揺れている間に、筋かいや金物が壊れてしまうことによって、建物の固有周期が長くなってしまったのです。
この固有周期を「等価周期」と言います。木造の等価周期は1~1.5秒と言われています。

この等価周期で共振してしまうと、被害がとても大きくなってしまいます。

ところで、この木造に大きな被害をもたらす1~1.5秒の周期の地震波を「キラーパルス」と呼びます。
最近報道機関でも取り上げられるようになってきました。名前はカッコイイですが、本当に怖い現象です。

現行の構造計算でも、この応答スペクトルの考えを計算に取り込んでいますが、あれだけ大きな被害が出てしまいました。
これだけ技術が発達しても、自然に対しては「まだまだ」ということですね。

構造コラム第4回「地盤改良(柱状改良)」

木造の戸建の場合に、ベタ基礎の採用がほとんどかと思われます。

その際に、地盤が建物を支える力(地耐力,支持力)が不足する場合は地盤改良を行います。

地盤改良の一つとして、その土地の土とセメントなどを混ぜて、
地盤のなかに円柱状の改良体をつくり支持力を増やす工法があります。

 
この改良体の支持力(↑)は、先端支持力と周面摩擦力の合計となります。

 
コラム地盤改良の図1
 

先端支持力:支持地盤が改良体を押し返す力(↑)

周面摩擦力:改良体が沈まないようにと周囲の土との間に働く摩擦の力(↑)

 
 

ここで、自沈層がある場合の話になります。

自沈層は摩擦力と逆方向の力(↓)が発生しています。

 
コラム地盤改良の図2
 

地盤改良の検討書の内容を確認すると、この自沈層でも摩擦力を考慮しているものが見受けられます。

自沈層では、改良体と同じように下方向に土が移動するため、自沈層の摩擦力を考慮しないなどの配慮を行っています。

また、基礎については後々の改修や補修の工事が行いにくかったり、大がかりになります。(建物のジャッキアップなど)

 

上記のような配慮を行うことによって、建物が傾く可能性を減らし
補修工事などのおきにくい、お施主様に安心していただけるお住まいが提供できればと考えております。

構造コラム第3回「木造の構造計画(耐力壁編)」

弊社では、構造設計のお見積りのご依頼をいただいた際に、
構造上気になる点があればお伝えしています。
一般的な木造在来軸組のプランについては簡易な壁量チェックを行い
現状のプランで通常の許容応力度設計が可能な壁量が確保されているか確認しています。

木造物件のお見積時に意匠事務所様にプランの調整をお願いすることが多い項目をご紹介します。
今回は耐力壁に関することです。
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構造コラム第2回「建物規模と設計ルート」

今回は、建物規模と設計ルートについてです。
まずは、建物規模と採用できる設計ルートの区分になります。

 

○ルート1
強度型:建物を変形しにくくして、地震に対して耐える ≒ 満員電車の中で踏ん張るイメージ

木造
建物高さ≦13m,軒の高さ≦9m

S造
建物高さ≦13m,軒の高さ≦9m,
+柱スパン≦6m,階数≦3,延べ面積≦500㎡ → ルート1ー1
+柱スパン≦12m,階数≦2,面積≦500㎡,平面的バランスが良い(偏心率≦0.15) → ルート1ー2
+柱スパン≦12m,階数≦1,面積≦3000㎡,平面的バランスが良い(偏心率≦0.15) → ルート1ー2

RC造(*1)
建物高さ≦20m,規定量の耐震壁(*2)がある

 

○ルート2
S造
建物高さ≦31m,塔状比≦4,平面・立面的バランスが良い(偏心率≦0.15・剛性率≧0.6)

RC造(*1)
建物高さ≦20m,塔状比≦4,平面・立面的バランスが良い(偏心率≦0.15・剛性率≧0.6)
規定量の耐震壁(*2)がある(耐震壁の量により、ルート2-1とルート2-2の2つがあります)

 

○ルート3(保有水平耐力計算)
靱性型:建物の変形能力を大きくして地震力を受け流す ≒ 満員電車の中で周囲と一緒に揺られるイメージ

S造・RC造(*1)
建物高さ≦60m

 

*1:RC造について
柱梁でフレームを組むラーメン架構について記載しています。

*2:規定量の耐震壁について
採用する設計ルートにより必要となる耐震壁の規定量は違います。
耐震壁の必要壁量は、多いほうから順に ルート1>ルート2-1>ルート2-2 となります。

 

各材料の特徴や想定される建物用途を勘案して、採用できる設計ルートが設定されています。
その設計ルートにより設計期間や躯体数量、確認取得までの期間も変わってきます。

また、建物規模ではルート1が採用できる場合でも
プラン等によっては上位の設計方法であるルート2やルート3を採用する場合もあります。

今回の建物規模と設計ルートは、これから計画する上での参考材料としていただけたら幸いです。

構造コラム第1回 「地震のこと」

このたび九州熊本地方を中心に発生した地震により、被害に遭われた方々、
また、東北地方での地震・津波等の災害により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

被災地の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

 

今回から、「構造コラム」として、構造設計に関わる様々な話を、時々更新していきます。

第1回目は、構造設計において、地震はどのように扱われているのかということについてです。

 

1. 建築基準法と震度

2016年熊本地震では、4月14日21時26分に震度7(以下前震)を観測し
2日後の16日1時25分にも震度7(以下本震)を観測しました。
それ以外にも、震度6強の地震が2回起きています。
(※気象庁発表:4月28日16時現在)

このように同じ場所で震度7が2回起きたケースは観測史上初めてです。
(過去に震度7が観測されたのは、「1995年兵庫県南部地震」「2004年新潟県中越地震」
「2011年東北地方太平洋沖地震」と今回の熊本地震の計5回です。)

建築基準法における、稀に発生する地震(中地震)は震度5弱程度、
極めて稀に発生する地震(大地震)は震度6強程度とされています。
ちなみに、震度7には上限がなく、過去に経験したことがないような大きな揺れの場合も含みます。

 

2. 建築基準法における建物の耐震性能のレベル

建築基準法上の規定では、中地震時には建物が損傷しない、
大地震時には人命を守る(建物は倒壊しないが、構造体に損壊が発生することは有り得る)ように
設計することとなっています。

これは、1つの建物が建っている間に、中地震は何度か起こり得るが
極めて稀な大地震は1度遭遇するかどうかだろう、という前提によっています。
つまり、現行の構造設計では、基本的に繰り返しの強い揺れを想定していないのです。

前震ではなんとか持ちこたえた家屋も、筋かいなどの耐震要素は少なからず損傷してしまいます。
そこへさらに大きな揺れが加われば、構造計算で想定された強度は発揮できません。

下記のリンクから興味深い実験映像を見ることができます。
兵庫耐震工学研究センターにあるE-ディフェンスという振動台実験による加震実験映像です。

リンク先の下の方にある「【2】木造住宅 -在来軸組構法-(2005年11月)」の映像では、
建築基準法が大幅に改正された1981年以前に建てられた建売住宅の実験が行われています。
2棟の同様な住宅を同時に加振し、補強無し住宅と補強有り住宅の大地震時の動きに違いが見られるか検証する実験です。
http://www.bosai.go.jp/hyogo/research/movie/movie.html

1回目の揺れでは補強無しの建物が倒壊しましたが、補強有りは倒壊していません。
しかし3日後に2回目の揺れを加えると、補強有りも倒壊してしまいます。

まさに今回の熊本の地震と同様のことが起きています。

 

大地震時に建物が建っていたとしても、例えば応急危険度判定士が「危険」の判定をした場合には、
安全が確認できるまで立ち入らないようにしていただきたいと思います。

今回の地震では、このように連続して大地震が起こり、多くの建物が
倒壊する結果になってしまいました。
今回の地震災害を教訓として、今後また同じ被害を繰り返さないよう
研究が進められるのではないかと思います。

被災した方々が1日も早く安心して暮らせるよう、心よりお祈り申し上げます。
また、今後の災害で犠牲になる人が1人でも少なくなるよう、構造設計士として日々精進してまいります。

 

参考:
一般社団法人 日本建築構造技術者協会 (JSCA) パンフレット「安心できる建物をつくるために」
http://www.jsca.or.jp//
国立研究開発法人防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター
http://www.bosai.go.jp/hyogo/index.html