今日、私たちは設計において特に意識することなく、規格化された製材品を使用しています。 しかし、その規格がどのような区分となっているのかについては、あまり知られていません。 今回は前回に引き続き、木材の規格と等級についてご紹介します。 現在、市場に流通している木材は、『農林物資の規格化および品質表示に関する法律(JAS法)』に基づき、JASで定める標準寸法に従って製材されています。 構造上での性能を評価する場合は、『集成材』であるか、『製材』であるかの大きく二つに分類することができます。 今回は、『製材』についてご紹介します。 ここでの製材とは、【森から原木を樹種や必要とする部材に合わせて木取りをして鋸引きしたもの】を指します。 こちらは、規格として下記の【3つの特徴】に従って分類されています。

①目視で判断したものであるか、機械で判断したものであるか

まず、人が目視で判断したものであるか、機械が判断したものであるかで製材は区分されています。 ●目視等級区分製材:人の目視による区分。 ●機会等級区分製材:機械によりヤング係数を測定し、製材の強度をE50~E150の6つの等級 に区分。

②使用部位 <目視等級区分製材>

目視等級製材は、さらに使用部位ごとに2種類に区分されています ●甲種構造材:梁や桁などの主として【曲げ性能】を必要とする部分に利用。 ●乙種構造材:柱や間柱など主として【圧縮性能】を必要とする部分に利用。

③木口の断面寸法 <甲種構造材>

甲種構造材は、さらに木口の断面寸法により2種類に区分されています。 ●構造用Ⅰ:主に板状と棒状の製材が対象。 <大きさの条件>:○木口の短辺が36㎜未満 ○木口の短辺が36㎜以上+木口の長辺が90㎜未満 ●構造用Ⅱ:主に厚板状と角状の製材が対象。 <大きさの条件>:○木口の短辺が36㎜以上+木口の長辺が90㎜以上 いかがでしたでしょうか。 ひとくちに製材と言っても、様々な分類があります。 製材の場合、この分類に加えて【無等級材】が存在します。もっとも安価ですが、強度のばらつきが大きいため注意が必要です。 構造設計者としては、このような材料に対する理解に基づき、建物に応じて材料を選択し、安全性・経済性に見合った設計を行っていく必要があります。 参考文献:新・木のデザイン図鑑 2009年6月12日発行 今日、私たちは設計において特に意識することなく、規格化された製材品を使用しています。 しかし、その規格がどのような区分となっているのかについては、あまり知られていません。 今回と次回は、木材の規格と等級についてご紹介します。 現在、市場に流通している木材は、『農林物資の規格化および品質表示に関する法律(JAS法)』に基づき、JASで定める標準寸法に従って製材されています。 構造上での性能を評価する場合は、『集成材』であるか、『製材』であるかの大きく二つに分類することができます。 今回は、『集成材』についてご紹介します。 集成材は、人工乾燥でよく乾燥させて欠点を取り除いたラミナ板を木目に沿って、長さ・幅・厚さの方向に接着剤で集成接着した建築材料を指します。 近年では、機械プレカットの普及により需要が一挙に増加しています。 規格としては、下記の【4つの特徴】に従って分類されています。

①断面の大きさ

断面の大きさにより、大断面・中断面・小断面の3つに区分されます。 ●大断面:短辺が15㎝以上、断面積が300㎝2以上のもの ●中断面:短辺が7.5cm以上、長辺が15㎝以上のものであって大断面集成材以外のもの ●小断面:短辺が7.5cm以上、長辺が15㎝未満のもの

②ラミナ板の構成

集成材とは、ラミナ板を重ねたものですが、その板をどのように重ねるかで品質が異なってきます。 ● 【同一等級構成集成材】 : 主に柱として利用。 同じ品質のラミナを重ねたもの。 ●【異等級構成集成材】: 主に梁として利用。 外側の層ほど強度の強いラミナ板を重ねたもの。 また、構成の仕方により【対称構成・非対称構成・特殊構成】に区分。

③E○○-F○○

強度等級として、【E(ヤング係数)】と【F(曲げ強さ)】で区分して表記します。 一般にヤング係数Eと曲げ強さFは相関関係にあります。 ●例:E105-F300 →一般にEが大きいほど変形しにくく、Fが大きいほど強度が大きい。

④使用環境

集成材の使用する環境に応じて接着剤の要求性能の程度を示す【使用環境A、 B、 C】の区分があります ●使用環境A:屋外での利用。高度な耐水性・耐候性・耐熱性が要求される環境 ●使用環境B:屋内での利用。構造物の火災時において高度な接着性能が要求される環境 ●使用環境C:屋内での利用。 いかがでしたでしょうか。 一口に集成材といっても、断面の大きさ・ラミナ板の構成・強度・使用環境により様々な規格があります。 もちろん要求性能が高ければ高いほど、高価な材料となります。 私たち構造設計者は、材料に対する深い理解に基づき、建物に必要な性能を見極め、材料を選択していく必要があります。 参考URL:日本集成材工業協同組合<http://www.syuseizai.com/home

工業高校や専門学校、大学などで建築構造を学ぶ時、最初に教わるのが構造力学です。柱や梁にどのような力がかかるかをひとつひとつ紐解いていきます。しかしながら、紙の上で「力を解く」という作業では、実際に力がはたらいたときに部材がどのように変形してどこで耐えているかは、イメージしにくいかもしれません。
そこで今回は、鉄筋コンクリート造の模型を使って力のかかり方を視覚的に解説しましょう。

構造力学では、基本的に3つの力を使って釣り合いを考えます。3つの力とは軸力(引張、圧縮)・せん断力・曲げモーメントです。ではこの3つの力を、模型を使って見ていきましょう。

まずは軸力です。部材を横に引っ張ったり押したりしたときに生じる力で、これは比較的イメージしやすいですね。模型を引っ張ると鉄筋が効いていることがよくわかります。

次に、せん断力です。これは物を切断しようとする力で、身近なもので言うと、はさみで物を切るときにはたらく力です。例えば短い柱があったとき、左から力を受けるとこのように変形します。

これはせん断力によって柱を真っ二つに切ろうとする力がはたらいていますね。ちなみにこのようにせん断力による破壊は、とても脆く危険な壊れ方をするので、構造設計ではなるべくせん断力で壊れないような設計をします。
 
最後に、曲げモーメントです。この曲げモーメントは文字通り物を曲げようとする力です。純粋に曲げモーメントだけがかかると、断面には引張と圧縮がかかります。これを模型で見ると良くわかりますね。

片持ち梁だと根元に大きな曲げモーメントがかかることが分かります。

このように、構造力学は紙の上だけでやっていると複雑で分かりにくいですが、視覚的に考えれば、案外シンプルなことだとわかります。大学の偉い先生や企業の研究者もたくさん実験をしています。わからなければ実際に造ってやってみる。これが正解へたどり着く確かな道しるべとなるのです。

物体の動きや強さなどを解析するとき、その形をそのまま作って解析すると、とてつもない時間がかかり、膨大な計算量となってしまいます。建築の構造計算をするときも例外ではありません。そこで、複雑な建物の形状を計算しやすいようにシンプルな形に置き換えます。この操作を「モデル化」といいます。
モデル化にもいろいろなものがあります。まず最初に行うモデル化は、柱や梁などを一本の線として置き換えます。これを「線材置換」といいます。

次は建物を支えるところについてです。建築では支点と呼びます。支点には大きく分けて4種類に分けます。横に移動できるローラー、移動はできないが角度が自由に動くピン、移動はできず角度は力を加えた分だけ曲がる回転バネ、移動も回転も拘束された固定の4種類です。

他にもいろいろな箇所でモデル化を行っています。また、計算方法が違うと建物全体で全く異なったモデル化をすることもあります。

このように、一つの建物を解析するときに、いたるところでモデル化をしています。モデル化は計算が簡単になる反面、実際の建物とは大きく異なった性質になってしまうこともたくさんあります。そこは構造設計者の判断で、どのようなモデルを選択するか。設計者の腕の見せ所です。モデル化は、構造設計の中でも最も難しくもおもしろい分野だと思います。

地球上にある建物にはさまざまな力がはたらきます。重力によるもの、気候によるもの、土や水など、その要因は多岐にわたります。構造計算では、建物にかかるであろうこれらの力に対して安全であることを確認しなければなりません。 建物にかかる力の代表的なものをご紹介しましょう。力には、常に力がはたらいている「常時荷重」と突発的にはたらく「臨時荷重」とに大別できます。 代表的な常時荷重には、固定荷重、積載荷重、土圧、水圧などがあります。 ・固定荷重 建物本体の自重のことで、柱や梁、壁や床、設備機器など移動することのない物の重さを合わせた力です。 ・積載荷重 建物内部において、移動することが想定される力のことです。 例えば、家具や人は積載荷重に含まれます。特に倉庫などは、どのような物を置くかを把握し、厳密に算定しなければなりません。 他にも部屋の用途によって、この積載荷重は細かく定められています。 ・土圧 地下にある壁をイメージしてください。片側は土に接しており、もう片方は土が無い場合、壁は土から横に押されるような力を受けます。これが土圧です。 土圧は土の種類(砂や粘土)などによってその性質は大きく変わります。 ・水圧 水圧は、深海に物を沈めると四方八方から力を受けてかなり小さくなってしまう現象でよく説明されますが、建築の場合問題になるのは地下水です。 地下水の位置が建物より上になると、浮力がはたらきます。 一方、臨時荷重には、地震力、風圧力などがあります。 ・地震力 地震によって建物が受ける力のことです。 日本は世界でも有数の地震大国で、この地震力は建築基準法でもかなり厳格に算定方法が決められています。過去の地震被害から何回も法改正が行われてきましたが、大きな地震が起こるたびに被害が出てしまいます。 ・風圧力 風の力をあなどってはいけません。木造や鉄骨造などの軽い建物は、地震よりも風の力の方が強いこともあるのです。風圧力も地震力同様、過去の台風被害などから地域ごとに細かく定められています。 その他 ・積雪荷重 常時荷重と臨時荷重のどちらともいえないのが、雪の重さによる積雪荷重です。 積雪荷重は、地域によって常時荷重としてみるのか臨時荷重としてみるのかが変わります。北陸地方や東北地方など、雪がたくさん降る地域は、常時荷重として考慮しなければなりません。 ちなみに構造計算では、この常時荷重を「長期荷重」、常時荷重と臨時荷重を合わせたものを「短期荷重」と呼び、それぞれに対して安全であることを証明しなければならないのです。

構造設計は、地震や台風などの自然災害から、人命や財産を守るとても大事な工程です。しかし、構造設計をやったことがない人にとっては、何をやっているのかわからない未知の領域です。そこで今回は、構造設計とはどういうことをしているのか、簡単に解説します。

天井から針金を使っておもりを吊るすとしましょう。左の図のように、1本の針金を使っておもりを吊るすとき、おもりの重さに耐えられるような、切れない太さの針金を決めます。

次に右の図では、斜めに針金が取り付いています。それぞれの針金にかかる力はどれくらいか、そして重さに耐えるにはどのくらいの太さの針金が必要かを考えます。さらに、天井と針金の接合部分はおもりの重さに耐えることができるか。おもりと針金の接合部分は針金が切れる前に壊れたりしないか。といったことも検討します。

実際の構造設計では、まず針金をどこにどう配置するか。すなわちどこに柱を配置し、梁をどう架ければ、安全でかつコストを抑えることができるかを考えます。この工程を「構造計画」といいます。

次に、その針金にかかる力はいくらで、どれくらいの太さならば耐えることができるか。すなわち柱や梁にどのような力がかかり、どれくらいのサイズならば安全であるかを探ります。この工程を「構造計算」といいます。

そして、柱や梁をどう配置するか、どれくらいのサイズかを「構造図」として作図します。

この一連の作業が「構造設計」なのです。構造設計をやるまでは「なんだか難しそうだな」と思っていましたが、いざやってみると「…想像していたよりはるかに難しい」というのが正直な感想です。それだけ奥が深い分野と言えますね。

今回は、建物の高さと幅の比率と基礎計画ついての話です。

建物の高さ/建物の幅の比を塔状比と言います。

この塔状比が基礎の計画の目安になります。

この塔状比が2.5未満ですと、直接基礎の場合は常時荷重が支配的です。

必要地耐力は長期時の接地圧を考慮して検討します。

この塔状比が2.5以上となると、直接基礎の場合に地震時荷重の影響が出てきます。

必要地耐力は短期時の接地圧も考慮して検討します。

この塔状比が4未満ですと、杭基礎の場合は柱が押し込む力が支配的です。

杭は、長期軸力,短期軸力を考慮して必要支持力(=杭径)を検討します。

この塔状比が4以上となると、建物が倒れないように計画する必要が出てきます。

支点(柱下の杭位置)に引抜きが発生する可能性が高くなるためです。

杭は、地震時の引抜抵抗力を考慮して検討します。

また、この塔状比が大きくなればなるほど、杭に求められる引抜抵抗力も大きくなります。

そして、この引抜抵抗力は杭表面と地面との摩擦力が主たる要因です。

従って、場所打ち杭とした場合は杭径を大きくして杭表面積を大きくします。

建物形状によっては、部分的に塔状比2.5以上ないし4.0以上の場合があるかと思われます。

この時は前述の目安で考えると、部分的に地震力の影響が大きい直接基礎、部分的に引抜抵抗力の大きい杭基礎での設計が考えられます。

ここで、上図のように敷地境界までが狭い時の、直接基礎+地盤改良の場合を考えます。

まず、どのような改良工法であれ、一般的に一つの建物に対して部分的に改良体を変えることは行っておりません。

従って、『建物の殆どの部分で塔状比2.5未満だが、一部が2.5以上となる建物』の場合、その一部で必要となる短期接地圧が改良地盤の強度を決定する事があります。

(部分的に基礎面積を大きくして、短期接地圧と長期接地圧のバランスをとる方法もあります)

以上の様に、塔状比(建物の高さと幅の比)によって基礎計画が変わってきます。

構造種別、階数、高さ、面積などが似通っていても、建物形状が違えば(部分塔状など)、杭径や必要地耐力が変わってくるのはこのためです。

特に狭小地では、杭が打設できるか否かや、直接基礎を大きくできるかの問題点も含んでいます。

建物を計画する際には、塔状比が基礎計画へ影響することを考慮いただけると幸いです。

建築用語で「ピロティ」という言葉があります。日本建築学会編「建築学用語辞典」(岩波書店)によると、ピロティは「建築物の一階部分で、壁によって囲われず、柱だけの外部に開かれた空間」と記載されています。

前述の「柱だけの外部に開かれた空間」であるピロティは、意匠的な意味で書かれています。しなしながら、構造の観点での「ピロティ」は少々意味合いが異なります。

構造上のピロティは、ある階に地震の揺れに抵抗する壁(以下耐力壁)がある場合、その直下階には耐力壁が無く、柱だけで地震に抵抗する形式を指します。このような形式は、意匠上のピロティと区別するため、「ピロティ形式」や「ピロティ構造」と呼ばれます。また、ピロティ形式の柱を「ピロティ柱」や「下階壁抜け柱」といいます。

このピロティ形式の最も典型的な例をご紹介します。マンションなどでは、一般的に住戸の境界壁を耐力壁として設計します。しかし、1階はコンビニや駐車場にするため、耐力壁を抜いて広々とした空間となるよう計画します。このような建物はピロティ形式の建築物であり、1階を「ピロティ階」と呼びます。

ピロティ形式は構造上の弱点になってしまう場合が多く、過去の大きな地震被害でも、マンションの駐車場が潰れてしまった映像や写真をご覧になった方もいらっしゃると思います。もちろん構造設計ではピロティ階で崩壊しないように、ピロティ柱に鉄筋を多く入れ、地震に耐えられるように設計します。ですが、想定以上の地震が来た場合はどうしてもピロティ階に被害が集中してしまいます。

一方で、ピロティ(意匠上のピロティを含む)のおかげで被害が軽減したという事例が報告されています※1。東日本大震災では津波による被害が顕著でしたが、ピロティで外壁が無かったために、津波のエネルギーを受けなかったと分析されています。

身近な建物がピロティ形式かどうか確認しておくと、いざという時に有効な避難に役立ちそうですね。

参考文献

※1 田中 礼治、澁谷 陽:津波とピロティ構造(特集 東北地方太平洋沖地震5周年「震災復興と地震・津波対策技術」(その1)) 日本地震工学会誌 = Bulletin of JAEE / 日本地震工学会 編 (27) 2016-02p.36-41

今回は、鉄骨造の建物を計画する時に、気をつけていただきたい点です。

特に狭小敷地の場合にご注意ください。

延べ面積を大きくとるために、外壁ラインを敷地境界に目一杯寄せる場合を想定します。

この時、地上部の柱・梁は小さいので、綺麗に納まっているように見えます。

また、エレベーターがあったとしても柱と大梁をかわして有効寸法が確保できます。

確かに”地上部は”綺麗に納まっています。

建物には地上部だけでなく、地中部が存在します。

鉄骨造の柱脚で代表的な、露出柱脚で考えてみます。

仮に地中部に1000*1000のRC柱型が必要な場合は、どうでしょうか。

へりあき距離が短く掘削ができない可能性がある事がわかります。

また、エレベーターの場合はどうでしょうか。ピットの有効寸法が確保できますでしょうか。

このように、鉄骨造の場合は地中部に地上部の柱より大きいRC柱型が入ります。

外周部やピット部の計画の際には、地中部にボリュームの大きいコンクリートの塊が

入る事を念頭に計画をお願いいたします。

現行の構造計算は、稀に発生する中程度の地震(震度4~5弱程度)に対して「柱や梁が損傷しないことを目標」とする一次設計、極めて稀に発生する最大級の地震(震度6強程度)に対して「柱や梁に損傷が生じても、倒壊・崩壊しないことを目標」とする二次設計に大別されます。今回はこの二次設計に着目してお話します。

前述のとおり、二次設計では柱や梁が部分的に壊れることを許容しますが、倒壊・崩壊しないようにと定められています。柱や梁が壊れても、建物全体が倒壊・崩壊しないとは一体どのような状態なのでしょう。

建物全体の壊れ方には、大きく分けると2通りあります。梁が先行して壊れる「全体崩壊」と、柱が先行して壊れる「層崩壊」です。

全体崩壊は梁が壊れて変形がどんどん進み、地震のエネルギーを「ひずみエネルギー」に変換して地震に耐えようとする設計です。一方層崩壊は、梁よりも柱が先に壊れてしまいます。この状態では壊れた柱は上からの荷重に耐えきれずに潰れてしまいます。図だと2階にいる人はまず助からないでしょう。

設計ではなるべく層崩壊を避け、全体崩壊となるようにしますが、層崩壊となってしまう場合でも、柱が壊れた時点で想定される地震に耐えていれば問題ありません。

しかしながら実際に地震が起きた場合、設計で想定した壊れ方にならないことがよくあります。特にこの層崩壊になりやすい建物があります。1階に駐車場のあるマンションです。マンションの住戸部分は地震に抵抗する壁がたくさんありますが、1階の駐車場は壁がない場合がほとんどです。このような形状では1階の柱が先行して壊れてしまうことがあります。

もちろん設計では全体崩壊とする、あるいは層崩壊が起こる前に地震に耐える設計としていますが、実際はそううまくはいきません。

地震被害などで、1階の駐車場が潰れて車がぺしゃんこになっている写真を見たことがある人もおられると思います。あれはまさに1階で層崩壊を起こしてしまったのです。

このように、「この建物はどこが弱点でどう壊れるか」を考えながら建物を眺めてみると、建物への見方が少し変わるかもしれませんね。