構造コラム第29回「建物にはたらくちから」
2019/01/21構造設計
地球上にある建物にはさまざまな力がはたらきます。重力によるもの、気候によるもの、土や水など、その要因は多岐にわたります。構造計算では、建物にかかるであろうこれらの力に対して安全であることを確認しなければなりません。
建物にかかる力の代表的なものをご紹介しましょう。力には、常に力がはたらいている「常時荷重」と突発的にはたらく「臨時荷重」とに大別できます。
代表的な常時荷重には、固定荷重、積載荷重、土圧、水圧などがあります。
・固定荷重
建物本体の自重のことで、柱や梁、壁や床、設備機器など移動することのない物の重さを合わせた力です。
・積載荷重
建物内部において、移動することが想定される力のことです。
例えば、家具や人は積載荷重に含まれます。特に倉庫などは、どのような物を置くかを把握し、厳密に算定しなければなりません。
他にも部屋の用途によって、この積載荷重は細かく定められています。
・土圧
地下にある壁をイメージしてください。片側は土に接しており、もう片方は土が無い場合、壁は土から横に押されるような力を受けます。これが土圧です。
土圧は土の種類(砂や粘土)などによってその性質は大きく変わります。
・水圧
水圧は、深海に物を沈めると四方八方から力を受けてかなり小さくなってしまう現象でよく説明されますが、建築の場合問題になるのは地下水です。
地下水の位置が建物より上になると、浮力がはたらきます。
一方、臨時荷重には、地震力、風圧力などがあります。
・地震力
地震によって建物が受ける力のことです。
日本は世界でも有数の地震大国で、この地震力は建築基準法でもかなり厳格に算定方法が決められています。過去の地震被害から何回も法改正が行われてきましたが、大きな地震が起こるたびに被害が出てしまいます。
・風圧力
風の力をあなどってはいけません。木造や鉄骨造などの軽い建物は、地震よりも風の力の方が強いこともあるのです。風圧力も地震力同様、過去の台風被害などから地域ごとに細かく定められています。
その他
・積雪荷重
常時荷重と臨時荷重のどちらともいえないのが、雪の重さによる積雪荷重です。
積雪荷重は、地域によって常時荷重としてみるのか臨時荷重としてみるのかが変わります。北陸地方や東北地方など、雪がたくさん降る地域は、常時荷重として考慮しなければなりません。
ちなみに構造計算では、この常時荷重を「長期荷重」、常時荷重と臨時荷重を合わせたものを「短期荷重」と呼び、それぞれに対して安全であることを証明しなければならないのです。