構造コラム第30回「建物のモデル化」
2019/01/21構造設計
物体の動きや強さなどを解析するとき、その形をそのまま作って解析すると、とてつもない時間がかかり、膨大な計算量となってしまいます。建築の構造計算をするときも例外ではありません。そこで、複雑な建物の形状を計算しやすいようにシンプルな形に置き換えます。この操作を「モデル化」といいます。
モデル化にもいろいろなものがあります。まず最初に行うモデル化は、柱や梁などを一本の線として置き換えます。これを「線材置換」といいます。
次は建物を支えるところについてです。建築では支点と呼びます。支点には大きく分けて4種類に分けます。横に移動できるローラー、移動はできないが角度が自由に動くピン、移動はできず角度は力を加えた分だけ曲がる回転バネ、移動も回転も拘束された固定の4種類です。
他にもいろいろな箇所でモデル化を行っています。また、計算方法が違うと建物全体で全く異なったモデル化をすることもあります。
このように、一つの建物を解析するときに、いたるところでモデル化をしています。モデル化は計算が簡単になる反面、実際の建物とは大きく異なった性質になってしまうこともたくさんあります。そこは構造設計者の判断で、どのようなモデルを選択するか。設計者の腕の見せ所です。モデル化は、構造設計の中でも最も難しくもおもしろい分野だと思います。