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構造コラム第1回 「地震のこと」

2016/05/02構造設計

このたび九州熊本地方を中心に発生した地震により、被害に遭われた方々、また、東北地方での地震・津波等の災害により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。 被災地の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。 今回から、「構造コラム」として、構造設計に関わる様々な話を、時々更新していきます。 第1回目は、構造設計において、地震はどのように扱われているのかということについてです。

建築基準法と震度

2016年熊本地震では、4月14日21時26分に震度7(以下前震)を観測し 2日後の16日1時25分にも震度7(以下本震)を観測しました。 それ以外にも、震度6強の地震が2回起きています。 (※気象庁発表:4月28日16時現在) このように同じ場所で震度7が2回起きたケースは観測史上初めてです。 (過去に震度7が観測されたのは、「1995年兵庫県南部地震」「2004年新潟県中越地震」 「2011年東北地方太平洋沖地震」と今回の熊本地震の計5回です。) 建築基準法における、稀に発生する地震(中地震)は震度5弱程度、極めて稀に発生する地震(大地震)は震度6強程度とされています。 ちなみに、震度7には上限がなく、過去に経験したことがないような大きな揺れの場合も含みます。

建築基準法における建物の耐震性能のレベル

建築基準法上の規定では、中地震時には建物が損傷しない、大地震時には人命を守る(建物は倒壊しないが、構造体に損壊が発生することは有り得る)ように設計することとなっています。 これは、1つの建物が建っている間に、中地震は何度か起こり得るが極めて稀な大地震は1度遭遇するかどうかだろう、という前提によっています。 つまり、現行の構造設計では、基本的に繰り返しの強い揺れを想定していないのです。 前震ではなんとか持ちこたえた家屋も、筋かいなどの耐震要素は少なからず損傷してしまいます。 そこへさらに大きな揺れが加われば、構造計算で想定された強度は発揮できません。 下記のリンクから興味深い実験映像を見ることができます。 兵庫耐震工学研究センターにあるE-ディフェンスという振動台実験による加震実験映像です。 リンク先の下の方にある「【2】木造住宅 -在来軸組構法-(2005年11月)」の映像では、建築基準法が大幅に改正された1981年以前に建てられた建売住宅の実験が行われています。 2棟の同様な住宅を同時に加振し、補強無し住宅と補強有り住宅の大地震時の動きに違いが見られるか検証する実験です。 http://www.bosai.go.jp/hyogo/research/movie/movie.html 1回目の揺れでは補強無しの建物が倒壊しましたが、補強有りは倒壊していません。 しかし3日後に2回目の揺れを加えると、補強有りも倒壊してしまいます。 まさに今回の熊本の地震と同様のことが起きています。 大地震時に建物が建っていたとしても、例えば応急危険度判定士が「危険」の判定をした場合には、 安全が確認できるまで立ち入らないようにしていただきたいと思います。 今回の地震では、このように連続して大地震が起こり、多くの建物が倒壊する結果になってしまいました。 今回の地震災害を教訓として、今後また同じ被害を繰り返さないよう研究が進められるのではないかと思います。 被災した方々が1日も早く安心して暮らせるよう、心よりお祈り申し上げます。 また、今後の災害で犠牲になる人が1人でも少なくなるよう、構造設計士として日々精進してまいります。 参考:一般社団法人 日本建築構造技術者協会 (JSCA) パンフレット「安心できる建物をつくるために」 http://www.jsca.or.jp// 国立研究開発法人防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター http://www.bosai.go.jp/hyogo/index.html

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