構造コラム第10回「片持ち材について」
2017/03/02構造設計
第6回において片持ち床の作り方をご紹介いたしました。
今回は、第6回の最終行『何故、片持ち床周辺の懐に余裕が必要なのか?』を『片持ち材の検討』を通してご紹介したいと思います。
●1点目
建築基準法に使用上の支障の検討というものがあり、部材のたわみ量に対して上限が決まっています。
片持ち材は部材の根元でしか繋がっていないため、たわみやすい部材です。
そして、この『たわみにくさ』を向上させるには、成(スラブ厚・梁成)を大きくする方が効果が高いのです。
●2点目
片持ち長さが2mを超えた場合に、短期地震時の縦揺れの検討が必要になります。
この場合の短期地震時の検討は、下記の式で行えます。
『 短期検討用荷重 = 長期荷重 + 鉛直震度1.0の地震時荷重 』
「鉛直震度1.0の地震時荷重」=「地震時の縦揺れ荷重は長期荷重*1.0の荷重とする」 という意味です。
従って、片持ち長さが2mを超えた場合の短期時は、長期荷重の2倍の力で検討することになります。
短期時の部材耐力は長期時の1.5倍ですので、長期の2倍の荷重/長期の1.5倍の耐力という検討になります。
例えば、長期荷重が100,長期耐力が150の場合
→長期時は、100/150=0.67 約30%の余裕があります。
→短期時は、(2100)/(1.5150)=0.89 約10%の余裕に減ります。
仮に、短期時に20%の余裕を確保しようとすると、0.89/0.8=約1.2となり当初の部材の1.2倍の耐力が必要ということになります。
部材耐力を大きくする時も、成(スラブ厚さ・梁成)を大きくする方が効果が高いです。
また、スラブの片持ち長さが2mを超えた場合は安全性に配慮し、片持ち梁を設けるなどを行います。
片持ち梁を設けた場合には受梁も設けます。(コラム第6回参照)
この受梁は、片持ち梁と繋がっており応力が伝達するので、片持ち梁と同じ耐力が必要になります。
そして、この受梁は室内側に設けますので、天井懐のスペースが必要になります。
以上2点より、片持ち材(床)の周辺の懐には余裕が必要となるわけです。
2017,2