構造コラム第11回「建物も人も粘り強く」
2017/04/05構造設計
構造設計をしていると、「脆性的(ぜいせいてき)」という言葉を耳にします。
あまり聞きなれない言葉ですが、脆い(もろい)という意味です。
構造設計では、建物が脆性的な壊れ方をせず
粘り強く地震に耐えられるような設計をします。
「建物が脆性的だとどうしてダメなの?」「粘り強く耐える?」
そんな人のために、ある例で解説しましょう。
![](https://www.eu-plan.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/04/d9a68610e5d6bfb97f0c8e56898db6b9-1024x724.jpg)
力自慢のAさんとBさんとCさんがいます。
Bさんは軽量級で2tの重さまで支えられます。
AさんとCさんは重量級なので4tまで支えられます。
![](https://www.eu-plan.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/04/c1574b0fa5c140cc4d08672d69dac08b-1024x720.jpg)
ちなみにBさんには双子のB’さんがいますが
2人は性格が全く異なります。
Bさんはすぐ諦めてしまい、2tの荷重がかかるとすぐに倒れてしまいます。
一方B’さんはとても辛抱強い性格です。
ですからずっと2tまでは支え続けることができます。
これからAさんBさんCさんと、AさんB’さんCさんのそれぞれに分かれて
体重1tの象を支えてもらいます。
2グループでどのような違いが出るか注目です。
![](https://www.eu-plan.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/04/fde2841354c35d5ed7dda8d42adcd94f-1024x722.jpg)
まずは象を3頭支えてもらいましょう。
荷重は3人均等にそれぞれ1tかかります。
BさんとB’さんはまだまだ余裕です。
余裕そうなので思い切って象を9頭に増やします。
![](https://www.eu-plan.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/04/f439642b8bb0722d75f6ae7ef350b513-1024x727.jpg)
均等に荷重がかかると、一人あたり3tかかる計算です。
Bさんのグループでは、案の定Bさんが諦めてしまいました。
するとAさんとCさんは9tの荷重を二人で支えなければなりません。
二人は4tまでしか支えられないので、たちまち二人も倒れてしまいます。
これが実際の建物だと「倒壊」です。
![](https://www.eu-plan.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/04/6b58d9bb390474329fabf925587b4d99-1024x720.jpg)
一方B’さんのグループでは、B’さんは2tまで諦めずに支えています。
つまりAさんとCさんは残りの3.5tを支えればいいのです。
支えられる最大の荷重は同じでも
最後まで諦めず3人で協力すれば支えることができるのです。
これを構造分野では「協同効果」といいます。
現実の建物においても、柱や梁に粘り強さが求められます。
このような性質を「靱性(じんせい)」と呼び、協同効果を発揮する大事な要因になるのです。
辛抱強く耐えていれば、きっと誰かが助けてくれるということですね。
人間も同じではありませんか。