構造コラム第43回ニューヨーク摩天楼 超高層ビル群~その2風と地震~
2020/09/19構造設計
19世紀末から20世紀初頭にかけて、シカゴから始まった建築の高層化競争をニューヨークが引き継ぎ、1930年には、高さ300メートルの<クライスラービル>
が実現するに及んで、ようやく30年以上前に完成したパリのエッフェル塔の高さを超えることになります。その翌年に、102階、高さ378メートルの<エンパイアステート・ビル>
が完成するまで、猛烈な勢いで超高層ビルが建設され、マンハッタンのスカイラインは新しいビルが建てられる度に、めまぐるしく変化していきました。1900年からの30年間で、8回も世界一位の座が更新されることになります。
この当時のビルは組積による「ベアリングウォール構造」で、鉄骨造のフレーム内をレンガや石の壁で塗り固めたものでした。ベアリングウォール構造により、鉄骨のラーメンフレームに比べて、建物の剛性は数倍に高まりましたが、組積造の壁はあまりにも重く、その施工には手間と時間がかかりすぎました。このような非合理で不経済な工法は、長続きしませんでした。
アメリカ東海岸の超高層では、荷重に対する考え方が、日本と大きく異なりました。アメリカの超高層ビルでもっとも支配的な外力は風荷重であり、これによって建物に有害な変形や振動が生じないように剛性を高めることになります。対して日本では、風荷重だけでなく、地震に対する配慮が必要になります。剛性をむやみに高めることは、地震入力の増大につながり、構造検討上、不利側に働く恐れがあります。日本では、地震と風を同時に見据えながら、堅すぎず、柔らかすぎない、ほどよい剛性バランスを探りださなくてはいけません。アメリカ東海岸では、風荷重のみを考えればよいので、その設計手法は、とにかくガチガチに剛性を高める工夫が特徴的です。