構造コラム第42回ニューヨーク摩天楼 超高層ビル群~その1シカゴから始まる~
2020/09/19構造設計
世界を見渡して、摩天楼の名に最もふさわしいとも言えるのが「ニューヨーク」。200メートルを超える超高層ビルが40棟近くあるのは、世界でもニューヨークだけです。米経済誌フォーブスの「摩天楼都市番付」でも毎年世界1位に輝いています。アメリカという国を代表するパワフルなアイコンとして、西海岸のハリウッド、ラスベガスと並んで、東海岸ではニューヨーク高層ビル群が、そのイメージ喚起力で抜きん出ているのではないでしょうか。今回から、ニューヨークの高層ビル群について、建築構造に焦点を当てて、その建設技術の変遷、歴史、また高層ビル建設のイノベーションに貢献した人物等について、ご紹介していきます。
アメリカにおける建築の花形は、何といっても超高層ビルであり、その歴史はそのままアメリカにおける建築構造の発展史に重なります。アメリカにおける高層化の流れは、実は、ニューヨークではなく、シカゴから始まりました。ジョン・ウェルボーン・ルートやルイス・サリバンらを代表とする「第一シカゴ派」と呼ばれる人々が活躍し、骨組みに鉄骨造を用い、外観をレンガで装飾したビルを次々と建設しました。それらのビルは最高でも16階建て程度でしたが、当時の人々からすればそれでも十分に高くそびえ立った建物であり、「スカイスクレパー」(空を削るもの)と呼ばれました。
しかし、これら「第一シカゴ派」の仕事は鉄骨造が組積造よりも高層の建物を建設可能であることを世に示しましたが、技術の発展を促すほどのインパクトは持ち得ず、鉄という材料が持つポテンシャルからすれば、その高さはあまりに低く、その限界を引き出すまでに至りませんでした。
この後に、高層ビル建設でシカゴに遅れをとったニューヨークも19世紀末には、高層化競争においてシカゴから主役の座を奪うことになります。
(次回へ続く)