構造コラム第31回「模型で学ぶ構造力学」
2019/01/21構造設計
工業高校や専門学校、大学などで建築構造を学ぶ時、最初に教わるのが構造力学です。柱や梁にどのような力がかかるかをひとつひとつ紐解いていきます。しかしながら、紙の上で「力を解く」という作業では、実際に力がはたらいたときに部材がどのように変形してどこで耐えているかは、イメージしにくいかもしれません。
そこで今回は、鉄筋コンクリート造の模型を使って力のかかり方を視覚的に解説しましょう。
構造力学では、基本的に3つの力を使って釣り合いを考えます。3つの力とは軸力(引張、圧縮)・せん断力・曲げモーメントです。ではこの3つの力を、模型を使って見ていきましょう。
まずは軸力です。部材を横に引っ張ったり押したりしたときに生じる力で、これは比較的イメージしやすいですね。模型を引っ張ると鉄筋が効いていることがよくわかります。
次に、せん断力です。これは物を切断しようとする力で、身近なもので言うと、はさみで物を切るときにはたらく力です。例えば短い柱があったとき、左から力を受けるとこのように変形します。
これはせん断力によって柱を真っ二つに切ろうとする力がはたらいていますね。ちなみにこのようにせん断力による破壊は、とても脆く危険な壊れ方をするので、構造設計ではなるべくせん断力で壊れないような設計をします。
最後に、曲げモーメントです。この曲げモーメントは文字通り物を曲げようとする力です。純粋に曲げモーメントだけがかかると、断面には引張と圧縮がかかります。これを模型で見ると良くわかりますね。
片持ち梁だと根元に大きな曲げモーメントがかかることが分かります。
このように、構造力学は紙の上だけでやっていると複雑で分かりにくいですが、視覚的に考えれば、案外シンプルなことだとわかります。大学の偉い先生や企業の研究者もたくさん実験をしています。わからなければ実際に造ってやってみる。これが正解へたどり着く確かな道しるべとなるのです。