構造コラム第3回「木造の構造計画(耐力壁編)」
2016/07/29構造設計
弊社では、構造設計のお見積りのご依頼をいただいた際に、構造上気になる点があればお伝えしています。
一般的な木造在来軸組のプランについては簡易な壁量チェックを行い
現状のプランで通常の許容応力度設計が可能な壁量が確保されているか確認しています。
木造物件のお見積時に意匠事務所様にプランの調整をお願いすることが多い項目をご紹介します。
今回は耐力壁に関することです。
壁量不足
建物全体的に、筋かいや面材を設置できる壁が足りないことがあります。
許容応力度計算を行った場合、施行令46条の壁量計算で算出する壁量の概ね1.5倍程度の耐力壁が必要になると言われています。
『規基準の数値は「何でなの」を探る 第2巻』(建築技術)のQ.242によると、
壁量計算の前提としている建物重量は「実際の値よりも低く、重量の大きな建物の場合には適切でない場合もある」が、「建築基準法は最低基準ということもあり、このような算定となった」そうです。
プランが成り立たなくなるほど壁の追加をお願いしなければならないこともありますので、ある程度余裕を持って壁を確保しておいていただければと思います。
偏心
構造計算を行う場合も、基本的には偏心率の規定(≦0.3)を満足させる必要があります。
耐力壁位置の偏りが大きいと、バランスよく配置できるようにプランを調整していただくことがあります。
特に1Fが車庫のプランなどで注意が必要です。既定の長さの耐力壁が確保できない場合は門型フレーム等の設置でクリアできることもあります。
有効となる耐力壁
耐力壁長さは、筋かい→w≧900かつL/w≦3.5、
面材→w≧600かつL/w≦5.0が必要です。
900グリッドは階高3150 , 910グリッドは階高3185を超えると筋かいが1スパンでは使えなくなります。
桁落ち部分など、高さの違う耐力壁は、剛性が変わることを考慮して検討しなければならないことがあります。
最低でも階高の半分以上の高さが無いと、耐力壁として見込むことは難しくなります。
上下の壁線ずれ
2階以上で、持出部分やスパンの長い梁上の耐力壁は、梁のたわみを考慮して、告示で決められた壁倍率よりも耐力を低減させて検討することになります。
上下の壁や柱はできるだけ揃っている方が効果が高いです。
耐力壁線
耐力壁線間隔は、なるべく近い方が好ましく、最大でも8m以下で壁を配置していただく方が良いです。
それ以上壁線が長くなると、壁量は満足していても通常の床仕様では床が水平力を伝達し切れなくなり、
不可となることがあります。
以上は標準的な許容応力度設計を行う場合の注意点です。
木造の計画の参考にしていただければと思います。
お見積りご依頼の際に、プランについて気になることがございましたらご相談ください。