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構造コラム第35回「構造計算プログラムの光と影」

2020/02/04構造設計

構造設計者が構造計算をするにあたり、建物にどのような力がはたらくか、その力に対して柱や梁は安全か、ということを確かめなければなりません。昔はそろばんや計算尺、電卓を使って計算していましたが、その後構造計算プログラムが登場します。構造計算プログラムにはいくつか種類があり、大きく分けると3つに分類できます。

一つ目は応力解析プログラムです。これは骨組みにどのような力が生じるかを解析するプログラムで、形状が複雑な骨組みも簡単に解析することができます。

二つ目は個別計算プログラムです。これは、応力解析プログラムで生じた力や部材にかかる荷重から、その部材が安全であるかを確認するプログラムです。この作業を断面算定といい、構造計算の中でも最も重要な項目の一つです。かつては図表などを用いて断面算定をしていましたが、個別計算プログラムが登場してからはより正確で大幅な時間短縮が実現できました。

そして三つ目は一貫計算プログラムです。建物の形状や規模、部材の材料や断面、荷重データなどを入力すると、応力解析や断面算定も含めて個々の部材や建物全体の安全性を一貫して計算するプログラムです。複雑な形状の建物では、なかなか実情通りの骨組みとして応力解析することが難しいですが、法律や告示などの規定を満足していなければメッセージを表示してくれるなどの機能もあり、大変便利なプログラムです。現在構造計算を行う際はこの一貫計算プログラムが主流となっています。

構造計算プログラムは、これまで繰り返し手計算を行っていた煩わしい計算をコンピューターが全て行い、計算スピードは格段に向上し、計算ミスも少なくなりました。さらに近年のコンピューター性能の向上に伴い、超高層ビルなど膨大なデータ量を有する計算も短時間で行えるようになりました。今や、計算プログラムは我々構造設計者にとって欠かせないものとなっています。しかし、便利な道具も使い方を間違うと、結果を大きく誤ることもあります。

とりわけ一貫計算プログラムが普及してから構造設計を始めた若手技術者にとっては、計算プログラムの中身を全て理解することは容易ではありません。したがって、「よくわからないが計算結果がOKなので問題ないだろう」という考えに陥ってしまいがちです。しかし、一貫計算プログラムを使うには技術者自身の「高度な工学的判断」が必要となるのです。
一貫計算プログラムに全て委ねてしまうのではなく、プログラムはあくまで「道具のひとつ」であることを肝に銘じておかなければなりません。

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