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構造コラム第39回「災害における構造の対策」

2020/06/19構造設計

構造設計では、特定の災害への対策として計算により力学的に求めた部材断面を状況に応じて大きくすることがあります。例えば、火災に対しては、木造建築物の燃えしろを確保するために、また塩害に対しては、鉄筋コンクリート造のかぶり厚を確保するためなどがあります。

木造建築物の燃えしろ設計では、耐火仕上げが行われていない現し(あらわし)の柱や梁に対して、火災により焼失する断面を想定し部材断面を大きくします。木材は表面から燃えていくため、中心部の強度はしばらくの間保たれます。そうすることで、建物が崩壊するまでに建物の使用者が避難する時間を確保するわけです。

燃えしろを考慮した木造建築物は、準耐火建築物となります。準耐火建築物で、木材を現しにしたい場合は、燃えしろ設計を行い部材を大きくすることで実現可能です。しかし、木材の現し部1面毎に3~4㎝大きくする必要があるので、通常よりかなり大きな部材断面になってしまいます。

 沿岸地域に建物を建設する場合、塩害に注意する必要があります。
特にその可能性が高い地域では塩害危険地域とされており、その危険度によってランクが区分されています。鉄筋コンクリート造の場合、強風時などに海水のしぶきが飛来し、コンクリート面が海水でぬれる可能性がある地域では、かぶり厚を大きくとる必要があります。かぶり厚とは、鉄筋の表面からコンクリート面までの厚さのことです。

 アルカリ性のコンクリートに酸性の海水がかかると、コンクリートが中性化してしまいます。コンクリートが中性化すると、鉄筋が錆びてしまいます。鉄筋が錆びると鉄筋の体積が増大してコンクリートがひび割れ、その隙間から海水が入りまた鉄筋が錆びるという悪循環に陥ります。このように躯体を劣化させないためにかぶり厚を大きくすることは有効です。

通常地上部で土に接していない部分での最小かぶり厚さは30~40mmに対して、塩害対策の被り厚は70mm(仕上げがある場合60mm)ですので、倍以上の寸法となります。その為、部材断面が大きくなり重量も重くなります。

 構造設計では地震や台風だけではなく、火災や塩害、凍害などの対策も行っています。部材断面を大きくすることは、建設コストが上がり、建物の自重も大きくなり構造設計的に難しくなりますが、それでも災害には対策が必要なのです。

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