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構造コラム第41回「S」の世界~その2~

2020/07/31構造設計

 前回は鋼材の種類やJIS規格品、大臣認定品について紹介しました。

 建築の骨組みにするためには、鋼材をメーカーで製造しファブリケーターの工場で加工します。本当ならこの工場で全ての骨組みを組み立てて現場に持っていければ良いのですが、運搬や施工の理由から現実的には不可能です。そこで、鋼構造では部材を細かく分断し、それらを繋ぎ合わせる接合部がいくつか存在します。接合部は骨組みの形態を保ち、部材から部材へ力を伝達するとても重要な役割を持っています。人間でいうと関節のようなものです。当然ながら設計や加工運搬、施工の各段階で手間を要し、また問題を生じやすい箇所であり、地震での被害も多数報告されています。裏を返せば、この接合部の加工や施工に配慮すれば、安全性はもとより工期の短縮や工費の削減に繋がるのです。

 接合部の接合方法には、リベットや高力ボルトを用いた接合と、溶接による接合があります。近年は熟練した溶接工の数が減少していることが問題になっています。また、接合部は「継手」と「仕口」に大別されます。継手は同じ部材を同じ方向に接合した部分であり、H形鋼では高力ボルト、角形鋼管では溶接によって現場で接合されることが一般的です。仕口は2つ以上の部材が異なる方向や角度で接合した部分であり、鋼構造の骨組みでは柱梁接合部(柱梁仕口部)が重要な仕口です。柱梁接合部は柱と梁の交差部分であり、溶接によって工場で接合されることが一般的です。この柱梁接合部は、兵庫県南部地震で損傷や破断など多くの被害が報告され、鋼構造では最も重要な部分の一つであり、現在でも多くの研究がなされています。このような継手や仕口の破壊は、構造物に大きな損傷をもたらす可能性が高いため、部材本体が損傷しても接合部は損傷しないということが現在の耐震設計の基本となっています。

 今回は鋼構造のほんの一部を紹介しました。鋼は本来強度が高く、粘り強い性質を持っており構造材料としては優れた性能を持っています。しかしながら骨組みとして使用する場合は注意すべき点も多くあります。そのような弱点を見極め適材適所で材料や加工方法を選定し、鋼の持つ長所を存分に活かすことが構造設計者の腕の見せ所といえるでしょう。

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