こんにちは!擁壁構造計算書のECサイト「StructureBank-工作物」の建築構造用語集 編集部です。今回は「高さ方向の地震層せん断係数の分布係数」とは何かを解説します。
「高さ方向の地震層せん断係数の分布係数」はいつ使う?
高さ方向の地震層せん断係数の分布係数は、地震力を評価する地震層せん断力を算出する際に使用する係数です。地震層せん断力は以下の方法で算出されます。
地震の力を求める時に「高さ方向の地震層せん断係数の分布係数」は使うのね!
地震層せん断力係数に関してはこちらの記事で解説しておるぞ!
高さ方向の地震層せん断係数の分布係数の定義
高さ方向の地震層せん断係数の分布係数は建築基準法施行令第88条にはこのように記載されています。
イマイチよく分からないわね
建物は高層階であればあるほど揺れるじゃろ?それを補正する係数ということじゃ
上の映像は東日本大震災の際の新宿の高層ビルが揺れる映像です。振り子のように上階ほど大きく揺れていることがハッキリと映像から確認できます。高さ方向の地震層せん断係数の分布係数は、建物の高さの影響を地震力に反映させるための係数です。
高さ方向の地震層せん断係数の分布係数の計算式
高さ方向の地震層せん断係数の分布係数の計算式は、国土交通省の告示により定められています。式は下図の通りです。
全然わからないわ😵💫💦
αiとT(設計一次固有周期)で決まる値であることをまず理解するといいぞ!
AIはαiと設計一次固有周期により値が決まります。設計一次固有周期は振動特性係数の際に使用したものと同じものです。
この式をもとにグラフ化したものが下図になります。
αiがよく分からないのよね…
そう言うと思って下図にまとめておいたぞ
αiは平たく言えば「高さ」です。ただ、地上からの距離を測るのではなく全体の積載荷重と固定荷重とのバランスによって決まりますが、基本的に上階に行くほどαiは小さくなります。
周期を固定してグラフを見た時、αiの値が小さくなる(=建物が上階になる)ほどAiが大きくなっていることがわかります。
上階ほどAiは大きめに計算されるってことね!
固有周期との関係
高さ方向の地震層せん断係数の分布係数は振動特性係数と同様に、設計一次固有周期によって値が変化します。
固有周期とは、簡単に言えば建物固有の揺れ方を表したものです。固有周期は一つの建物に無数存在します。その中で最も周期の長いものを一次固有周期といい、地震力を算出する際はこの値を用います。
固有周期は建物の高さや、柱の大きさ、梁の太さ、床上の積載物によって変化します。超高層ビルではコンピューターを用いて解析し検討します。しかし、建築基準法上では固有周期は高さに比例するものとする簡易的な式で算出します。
高さ方向の地震層せん断係数の分布係数と固有周期にも関係性があります。αiの値を0.2と仮定した場合、固有周期が長いほどAiが大きくなることがわかります。
設計一次固有周期が大きいということは建物が高いということよね
建物が高いほど、Aiは大きく見積もる必要があるから当然と言えば当然じゃの
高さ方向の地震層せん断係数の分布係数は地震力を「割増」する係数
地震地域係数や振動特性係数は最大値が1.0であり、基本的に地震力を低減する係数です。一方で高さ方向の地震層せん断係数の分布係数は、グラフを見ても分かるとおり1.0が最小値でAi=2やAi=3となることもあります。つまり、他の係数と違い地震力を割増する係数です。
αi=1、すなわち1階の時の値が周期に関係なく1となり、そこから上階になるほど、あるいは周期が長くなるほどAiの値は大きくなります。
ねぇ、耐震じぃ。Aiって2とか3とかの値をとるけど、上階の地震力が大きくなりすぎるんじゃない?
確かにAiの値が大きくなり、上階の地震層せん断係数は大きくなるの
ということは、地震力は上階の方が多くなるってこと?
そうとは限らないぞ!地震力は、地震層せん断力係数とその階より上の重量の積で計算されるのじゃ。
Aiの影響で上階ほど係数は大きくなるが、支える建物の重量は下階の方が大きいから地震力は下階の方が大きくなりやすいぞ!
そっか!上階はそもそもその階より上の重量が小さいのね!
逆に1階をこれ以上、割増するとあまりにも地震力が大きくなりすぎて現実的でなくなってしまうぞ
だから1階が最低値で上階ほどAiが増えるのね
まとめ
- Aiは、地震力を算出する際に建物の高さによる影響を加味した係数
- 上階ほどAiは大きくなる
- 固有周期が長いほどAiは大きくなる
他にもたくさん難しい係数について解説しているので見てね!
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