こんにちは!擁壁構造計算書のECサイト「StructureBank-工作物」の建築構造用語集 編集部です。今回は「高さ方向の地震層せん断係数の分布係数」とは何かを解説します。
今回は「壁率比」の計算方法について解説します。
「壁率比」について
以前の記事で「壁率比」の考え方について解説しました。今回は実際に一級建築士試験の問題を用いて壁率比の計算を行い、理解を深めていきましょう。
「壁率比」はこちらの記事で解説しておるぞ!
建築士の問題を見てみよう!
令和3年(2021年)の一級建築士学科試験にて壁率比に関する問題が出題されています。壁率比の問題は頻出問題の一つです。
選択肢1、2は「必要壁量」、選択肢3、4は「壁率比」に関する問題です。
「必要壁量」を計算してみよう
必要壁量とは
必要壁量とは、文字通り必要な壁の量です。その壁の量は側端部分(1/4)の面積によって決まります。側端部分の面積が大きければ大きいほど「必要壁量」は大きくなります。
側端部分の面積(㎡)を、壁量(cm)に変換する必要がありますが、こちらは法令(建築基準法施行令46条4項表二)によって定められています。
「X方向の北側の側端部分」の必要壁量を求めてみる
「X方向の北側の側端部分」の必要壁量は、「側端部分の面積」に「単位面積あたりに必要な壁量」を乗じて求められます。X方向の北側の側端部分(1/4の部分)は下図の青色の部分となります。1マス1㎡なので16㎡となります。
「単位面積あたりに必要な壁量」は、今回の問題では15cm/㎡と設定されています。
この二つの数値を掛け算するのね!
16㎡×15㎝/㎡=240㎝ すなわち、2.4mとなります。
必要壁量はこのようにして計算します。
選択肢1の「X方向の北側の側端部分」が2.4mという記述は間違ってないわね
他の部分の必要壁量について
他の部分の必要壁量についても同様の計算方法で求めることができます。しかし、今回は「単位面積あたりに必要な壁量」がどの部分でも15㎝/㎡なので、側端面積さえ同じであれば、必要壁量も同じになると言えます。
「X方向の北側の側端部分」と「Y方向の東側の側端部分」は同じ面積(16㎡)なので、必要壁量は2.4mとなります。
選択肢1の記述は正しいということじゃ!
また、「X方向の南側の側端部分」及び「Y方向の西側の側端部分」の面積について、どちらも「X方向の北側の側端部分」の半分の面積なので、必要壁量も半分となります。
ということは必要壁量は2.4mの半分の1.2mってことよね?
選択肢1、2の記述は正しいということじゃ!
「壁率比」を計算してみよう
選択肢1,2は正解だったので、残りの壁率比についての選択肢3,4のどちらかが間違っていることになります。壁率比の計算方法をおさらいしながら、実際に計算してみましょう。
壁率比の求め方
壁率比は、求めたい方向の両端の「壁率充足率」の比をとって算出します。「壁率充足率」は「必要壁量」に対する「存在壁量」の割合です。
いつ見てもややこしいわね💦
忘れてしまった人は、以下の記事をチェックじゃ!
X方向の壁率比を求めてみる
それでは、今回の問題の「X方向の壁率比」を求めてみましょう。まずは「壁率充足率」を求めるために必要な「必要壁量」と「存在壁量」について求めて整理しましょう。
「必要壁量」はすでに選択肢1、2を考える際に算出しているので、2.4mと1.2mの値を使います。
「存在壁量」は側端部分に存在するX方向の壁の長さを数えます。今回の場合だと、北側の壁の長さは2m、南側の壁の長さは4mとなります。「存在壁量」を考える際は壁倍率も考慮しますが、今回は「壁倍率は全て1とする」と設定されているので、壁の長さがそのまま「存在壁量」となります。
南北それぞれの存在壁量・必要壁量が出揃ったので、「壁率充足率」を求めます。「壁率充足率」は「存在壁量」/「必要壁量」で算出できるので、以下のようになります。
南北の壁率充足率がそれぞれ出揃ったので、いよいよ壁率比を求めます。壁率比は「小さい方の壁率充足率」/「大きい方の壁率充足率」で求められます。計算すると0.25となります。
ということは、選択肢3は壁率比が0.5って言ってるから、これが誤りってことね!
Y方向の壁率比を求めてみる
X方向の壁率比の出し方を丁寧に手順を追って説明しました。
X方向が理解できた人はY方向を自力でやってみよう!
Y方向の壁率比は、コンパクトに一枚にまとめてみました。
Y方向の壁率比は、0.5と計算されました。よって選択肢4は正しい記述となります。結果的に今回の正答は3ということになります。
もう一問やってやってみよう
平成30年(2018年)の一級建築士学科試験の問題です。こちらは壁率比を求めるストレートな問題です。ぜひ、チャレンジしてみてください。
X方向の壁率比
X方向の壁率比を求めてみましょう。側端部分、壁の長さを図から読み取り、存在壁量と必要壁量を北と南、それぞれ求めて壁率充足率を求めます。今回、「壁倍率は全て2とする」とされているので、壁倍率は2で計算します。
また、単位面積あたりに必要な壁量の設定がありませんので、ここではαと置いて計算します。これらの条件から計算すると壁率比は0.5と計算ができます。↓
よりシンプルなやり方
上の図では、各用語の定義に則って丁寧に計算したものですが、条件によってはここまで厳密に計算せずとも、答えを算出することができます。
上の図のように厳密に計算せずとも、よりシンプルなやり方もあるぞ
どうやってやるの?
例えば、単位面積あたりに必要な壁量(αと設定)は結局、壁率比の計算の際に打ち消されるじゃろ?
確かに!分子と分母にあるもんね!
同じく、壁倍率も今回全ての耐力壁が2じゃなから、打ち消されるんじゃ
じゃぁ、これらはどうせ打ち消されるからないものとして計算しちゃえばいいのね!
「壁倍率」や「単位面積あたりに必要な壁量」を省略して考えると以下のようになります。
X方向の壁率比は1/4αと1/8αから0.5、Yの壁倍率は両端ともに1/4αなので1ということが分かります。ですので今回の問題の正答は選択肢1ということになります。
壁倍率とか「単位面積あたりに必要な壁量」を省略すると楽に計算できるわね
ただし、今回は「壁倍率」がどの耐力壁でも同じで「単位面積あたりに必要な壁量」も同じじゃったから、このように省略できるだけじゃぞ!
例えば、壁倍率が耐力壁によって変わる時はちゃんと計算しないとダメね!
今回は壁率比の計算について解説しました。実際に手を動かして考えてみることによって壁率比について、より理解が深まったのではないでしょうか?
壁率比について、まだよく理解できていないなという方は以下の記事をチェックしてみてください!
StructureBank-工作物について
『Structure Bank工作物』は構造計算が必要とされない擁壁、塀、階段部材などの工作物に対する構造計算書や図面を、オリジナルのECサイトを通じて提供するものです。
サイトには安全性を確認した構造体の構造計算書類が格納されています。
以下の工作物の構造図と構造計算書をサイト上で購入することができます。
ユーザーは構造設計事務所に依頼することなく、必要な構造計算書類を購入することができます。
・高さ2mまでのL型擁壁(1階~3階建ての木造住宅を設置可能)
・高さ2mまでの逆T型擁壁(平屋建ての木造住宅を設置可能)
・高さ2mまでのコンクリート塀
・鉄骨階段の踏板
利用できる構造計算書類の総数は120点を超えており、様々な状況下における工作物のパターンを網羅しています。
無料会員登録後、すべての商品をクレジットカードにて購入可能です。
擁壁どうしようか?と悩んでいる時間を0にします。ぜひともご利用ください!