【建築知識あれこれ】擁壁と干渉した場合の対処方法

構造設計一級建築士の@mituru0622です!

よくあるご相談で、擁壁の上に建築物を設置できるか?またその対処法は?ということをよく伺います。

そこで、今回は擁壁と建物の干渉も含めて位置関係別にその対処方法についてご紹介します。

擁壁と建物との距離を十分に離す

もっとも安全な方法です。擁壁に荷重負担をかけない範囲に建物を配置します。

荷重負担をかけない範囲とは一般的に底板上部の先端から30度の範囲です。

30度は安息角と呼ばれ土の上部に載荷した時でもこれ以上確度が下回らないと想定されています。
確度が下回らないということは擁壁に水平荷重が生じないということです。

また、ルート1-1であれば除外されるはずの偏心率も
追加で規定されてしまい、制約が大きくなります。

対してルート2の場合は付帯条件がないのが特徴です。

擁壁の上部に建物を設置する(直接配置)

もっとも効率よく敷地を利用できるパターンです。

しかし、このパターンを利用するためには擁壁の構造計算内容を確認する必要があります。

擁壁の構造計算時には上載荷重という荷重を見込んで計算をしています。
上載荷重とは擁壁上部に設置してもよい建物の荷重のことです。

構造計算をしていても、この上載荷重よりも大きな荷重を有する建物を設置することはできません。

必要なもの

・既存擁壁の構造計算書
・地盤調査資料(柱状図もしくはSS試験結果)

注意!!

宅造地域では擁壁の構造計算と求められますが、上載荷重は10kN/㎡(1t/㎡)程度であることが多く、木造では2階建てでギリギリOKという程度です。3階建てを配置することが不可能なことが多いので十分に構造計算の内容を確認しましょう。

擁壁の上部に建物を設置する(基礎持ち出し)

おそらくもっともコストがかかる方法です。擁壁の安全性が確認できない、または確保できない時に使用します。

擁壁の底板上部の建物基礎は底板のない部分の基礎から梁やスラブを持ち出して支持します。そのようにして擁壁に負担をかけないようにします。また、底板のない部分も擁壁には負担をかけてはいけないため、地盤改良を施工する場合が多いです。

片持ち基礎も建物の形状によっては非常に大きなものになることがあります。
また、地盤改良も施工する必要があるため高額の追加コストがかかります。

しかし、擁壁が崩壊することを防止するための必要なコストでもあります。

必要なもの

・地盤調査資料(柱状図もしくはSS試験結果)

擁壁の上部に建物を設置する(地盤改良)

底板の天端まで地盤改良を行い、擁壁に土圧(水平力)をかけない方法です。地盤改良のコストと地盤調査の費用が掛かりますが、片持ち基礎パターンよりも安価です。

そのためには底板付近で地盤調査を行い、底板下の地耐力が十分であることを確認する必要があります。

必要なもの

・地盤調査資料(柱状図もしくはSS試験結果)

注意

この方法は行政や審査機関によって判断が分かれます。底板付近の地盤調査では底板直下の地耐力を確認するとは認められない、というのが主な理由です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は既存擁壁があるときの対処法について説明しました。

いずれの場合も行政や審査機関によっては認められないことがあります。
十分に担当機関と協議をおこない、安全かつ経済的な方法を採用してください。

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